ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

江刺の稲

信頼は情報公開の努力から

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第34回 1998年11月01日

  • この記事をPDFで読む
    • 無料会員
    • ゴールド
    • 雑誌購読
    • プラチナ
先日、デパートの名店街にも店を出している老舗の果実店の梨を頂いた。化粧箱の中には、その果実店の歴史と店の看板(ブランド)への誇り、そして品物へのこだわりを書き記したしおりが入っていた。しかし、梨の一部は芯が傷んでいた。生理障害ではないかと思われた。平年だったら素晴らしい梨なのだろうけど、今年の天候ならあり得ることだとも思った。不良品の返品を受け付ける旨のシールも入っていたが、その気にはなれなかった。
 先日、デパートの名店街にも店を出している老舗の果実店の梨を頂いた。化粧箱の中には、その果実店の歴史と店の看板(ブランド)への誇り、そして品物へのこだわりを書き記したしおりが入っていた。しかし、梨の一部は芯が傷んでいた。生理障害ではないかと思われた。平年だったら素晴らしい梨なのだろうけど、今年の天候ならあり得ることだとも思った。不良品の返品を受け付ける旨のシールも入っていたが、その気にはなれなかった。

 そして、もしその箱の中にもう一言「今年の天候は異常であり、選ばれた優れた生産者であっても外からは見えぬ不良品の発生がありえます」旨のお詫びの断りが入っていたとしたら、むしろそこに高級果実を扱う老舗のプライドと責任を感じたであろう。単に高級な果物を綺麗に包装して高く売るだけではなく、最高級の技術を持った栽培者が管理した「自然の恵みの有難さ」を伝える商売であればこそ、老舗の果物店ではないかと思ったからだ。それが、宝石店でも洋服店でも家具店でもない、果物店であればこその暖簾なのではないのか。

 一方、今年の春、ポテトチップのカルビーが、春先の異常天候のためにバレイショが不作となり、そのためポテトチップの供給に支障をきたすという「欠品のお詫び」広告を新聞各紙や一部の量販店の店頭に掲載した。国産のバレイショを使い、イモの鮮度を売り物にしたポテトチップでは代替品や貯蔵品でそれに置き換えることは許されない。当然のことながら、大方の流通業界からは非難を浴びたが、一部の量販店がそれに呼応して、店の棚から全てのポテトチップを外した。

 消費者の反発も予想されたが、改めて店にポテトチップが並ぶようになると、その量販店チェーンでは前にも増してカルビー製品が売れたという。

 不良品も欠品もあってはならないことである。しかし、農家と共に生産から商品開発、マーケティングまで、自らの手で手掛けるカルビーだから、顧客に対する「善意の欠品」を語ることができたのではないか。

関連記事

powered by weblio