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特集

お天気先取りの経営戦略

【新しい農業気象情報へのニーズ】

 気象情報業務の面でこうした変化が起きたちょうどそのとき、農業の国際化、農産物輸出入の自由化、農村の過疎化や農業人口の減少、高齢化等々、農業農村を囲む情勢への対応が緊急の課題となっていた。こうした中で、農業生産性の向上、農業経営の安定化に資する様々な対策の一つとして農業における気象情報の利用を改善しようとする動きが高まった。農林水産省が推進する「気象情報農業高度利用システム」も、このような情勢を背景に創設された。

 平成8年度に、長野県協同電算県域の農業情報ネットワーク構築の基本計画策定のために実施された調査では、農業情報システムに求めるコンテンツとして、市況情報、農業技術情報、病害虫・防除情報に次いで4位に農業気象情報があがっている。では、農業にとって必要な気象情報とはどのようなものだろうか。長野協同電算の調査で「農業気象情報について思うところは?」という問いに対して農家からは、(1)全国・県域の気象ではなく、地元の気象でなければ利用価値がない、(2)(数時間先、翌日、週間、長期などの)予測情報は早め早めに欲しい、(3)信頼性の高い正確な予測を希望する、(4)霜、雹、台風などに関する事前の災害予測情報が必要、(5)天候による農作業の対応策等農業技術を取り込んだ農業気象情報が欲しい、等の意見が寄せられた。雹の予測など技術的に難しいものもあるが、いずれも農家として当然の意見や要求である。

 では、きめ細やかで多様な気象情報が入手できるようになったとき、それらをどのように農業に活かしていけばよいのだろうかという問題がある。これまでの農業現場では、きめ細かで多様な気象情報を必要に応じて随時利用できるという機会がなかった。このため、農業現場で気象情報を利用するための体系的な技術が整っていないのが実情である。したがって、気象情報の農業への利用に当たっては、農業試験場、普及センター、そのほか農業気象について技術を有する行政や試験研究機関の専門家の指導・支援が必要である。

 たとえば宮城県農業センターでは気象情報、病害虫発生予察情報、稲作情報等の技術情報を取り込んだ「農業気象情報分析管理システム」を構築しているし、また、農林水産省東北農業試験場では「水稲冷害研究チーム」が日々の気象状況の監視情報と冷害対策のための技術指導情報をインターネットを通じて提供しており、アメダス地点の気温経過図(日最高、日最低、日平均)と田植え期からの積算温度図(毎日更新される)を掲載している。気温経過図は低温障害の発生の監視に、積算温度は生育診断・生育予測(幼穂形成、出穂、登熟、刈り入れ適期等の予測)・肥培管理等への利用を主な目的としており、冷害防止のための技術コメントが付いている。北海道中央農業試験場も気象情報を利用した麦・豆・馬鈴薯・飼料作物などについての作物生育進度、病害虫発生予察等を全道メッシュ情報としてコンピューターネットワークで提供している。これらの技術情報は地域で気象情報を利用する上で大いに参考になる。

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