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農業経営者ルポ「この人この経営」

緑の牧場から食卓まで

 必欲品だから並ぶ敵がいない。だからますます顧客が集まってくる。私自身、ここを取材で訪れるたびに買物をして帰る。あの味を覚えているし、ぶらぶらと買物をしたくなる雰囲気がある。まるで農業の“銀ブラ”だ。サイボクは農業の新しいパラダイムを提示している。そこまで言っても、けっして過言ではないと思う。


アグリトピアから農業ディズニーランドへの挑戦


 笹崎社長は自ら実践してきたミートピア事業を含めて、農業全体のアグリトピア化を提唱している。

「米などの主食を担う専業農家は現在の10分の1くらいに削減する。そして1戸あたりの耕地面積を広げて、30~50ha規模の大規模農業を行う。もちろん企業経営でね。そして兼業農家は作目別に再編して、フードピアやフルーツピア、フラワーピアなどを創造する。特産地化した営農集団をつくって、製・販・サービス一体の完全一貫経営を行う。我々のような大規模でなくてもいい。数名から10名くらいのスタッフで農業法人を作ればいいんだ。全農家の70%から75%くらいが、このような第4次産業を担うことになる。これが私の描く21世紀の日本農業です」

 実はそのプロトタイプともいえる試みが、サイボクの中で始まった。今年4月1日にオープンした「楽農ひろば」だ。ここでは地元産の有機野菜、果物、花きなどを、地元の生産者とともに組織した「楽農心友会」が中心になって販売している。そのルーツは従来サイボク内にあった野菜直売コーナーで、笹崎社長が地元の農家に声をかけて21年前にスタートしたものだ。この部門だけで年間数億円以上を売るほどの実績を上げてきた。

「ウチで飼養している豚や肉牛の糞尿を、有機肥料として地域の農地に還元して有機野菜を生産していただく。そして地域の方々に供給して行く。これまで試みてきた循環農業が、新たな段階に入った」。そう言って自信をみなぎらせる。

 陳列面接は直売コーナー時代の3倍。野菜だけだったものに果実、花きが加わり、近く茶房もオープンする。第4次産業としてのアメニティが次第に現実味を帯び始めたようだ。

 また近い将来、首都圏の大動脈である国道16号線に沿って圏央自動車道が完成する。そしてインターがサイボクの近くにできる。圏央道は東名高速、中央道、関越道、東北道と結ばれ、成田空港、千葉、木更津、東京湾とも橋または海底トンネルで結ばれる。商圏の飛躍的な拡大を見込んで笹崎社長は次のシナリオを温めている。

「完全一貫経営の第4次産業の先には、さらにアメニティという意味での魅力を高めた第5次産業としての農業がある。それを私は”農業ディズニーランド“と呼んでいます。自然という素晴らしい資源をもつ農村には、東京ディズニーランドに負けないくらい人々を惹きつける魅力があるのです」

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