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農業経営者ルポ「この人この経営」

村の豊かさを未来につなぐために

知床半島から網走を経て宗谷岬に至るオホーツク海沿いの海岸線には長い砂浜や砂嘴で封じ込まれた塩湖が点在する。
 知床半島から網走を経て宗谷岬に至るオホーツク海沿いの海岸線には長い砂浜や砂嘴で封じ込まれた塩湖が点在する。大雪山系を源にした幾筋もの川が運んだ土を冬の親潮と夏の宗谷暖流が海岸沿いに堆積させたものである。ミネラル分に富む水と土は川の流域に肥沃な沖積地と豊壌の海をもたらした。サロマ湖のホタテ養殖の成功もその豊かな土と水が可能にしたものである。そして、夏の日照と気温に恵まれた斜里、網走、北見、常呂などの地域は農業地帯として今後さらに発展することが予想される。

 小野寺俊幸さん(47歳)の住む常呂町は、網走からオホーツク海沿いの道を稚内に向かって約50km。さらに常呂川河口に開けた常呂町の中心部から約15kmさかのぼった場所に小野寺さんのお宅はあった。約31ヘクタールの畑作経営者である小野寺さんの経営は、玉ねぎ、加工用馬鈴薯、ビート、麦などの加工原料あるいは貯蔵性のある作物が主体だ。20年間バレイショを連作してもソウカ病が発生しないという土壌や夏の気象条件を活かして、野菜産地としても発展することを目指している。しかし、それを実現するためには消費地に遠い物流面での制約や労働力問題、さらには生産者の意識を含めた地域の改革が必要だと小野寺さんは考えている。

 小野寺さんは22歳の時に国際農村青少年交換留学制度でアメリカのニューイングランドに1年間の研修を体験した。酪農家やポテト農場でも研修を受けた。しかし、小野寺さんにとって幸運だったのは、民間の乳質検査員の家とライムトラックと呼ばれる施肥設計から肥料販売と散布までを請け負うコンサルタントの家庭にホームステイしながら研修を受けられたことだった。コンサルタントという立場から沢山の農業経営と経営者たちを見ることができたのだ。さらに、農業コンサルタントというサービスが民間のビジネスとして成り立っており、それが農業経営者をバックアップし経営の健全化に繋がっているということも新鮮な驚きだった。アメリカの農家たちの経営者マインドにも触れた。彼らは相手がどんな大企業であろうとも対等なビジネスパートナーとして振る舞っていた。クールな計算をしながらもマーケティングテーマを共有し、共通の目的のために農家と関連産業が市場開拓をしていく姿を見てきた。

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