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土壌別経営診断うちの土ではどう作る?

長野県東筑摩郡明科町・池上洋助さんの場合

 ドイツのリービッヒが手掛けた化学的追求と人工的に肥料を作り、それを植物に与えてよりよく生長させるという考え方が日本に入りはしましたが、戦前・戦中の日本では、化学肥料はあまりにも高価であり、一般農民は簡単に手に入れることもできず、自分たちの周りにある有機物を死に物狂いになって集めては田畑に入れ、作をくり返していたのでしょう。

 それが戦後の食糧不足から、人口爆発、新規農地の開拓となり、大きな面積で土を調べる、土を改良する必要性がこの国の国土に生じたのだろうと思います。

 日本のように多雨で、土が痩せている条件では、山林原野を開墾しても、酸性が強く、リン酸成分を始め多くの栄養分が欠乏した土壌で、このままでは作物が育たず、開拓の悲劇は各地で生まれたことでしょう。

 こんな背景の中で、農林行政は、土壌分析とその処方、そして土壌改良の事業を推進してきました。

 改良普及所や農協にも土壌分析の機器が導入され、土壌に不安を持つ農家、土壌をよくしたいと願う農家は分析サンプルを持ち込み、この悩みをある程度は解決していったのです。

 この当時の開拓土壌は、成分欠乏状態であったことから、石灰類でもリン酸でも、とにかく入れれば、作物はよりよく育つという現象が起きていたと推測されます。

 ですから、分析を委託する方も、その土壌がどうなっているとか、分析値がどうだということは、特に問題にしなかったのではないでしょうか。

 つまり、分析を受ける農業者は、土の仕組みやその現状も理解出来ないまま、肥料や改良資材を施用し続けたのです。

 その結果現段階では、成分過多と判定される土が大半となってしまったわけです。

 そして、各地にある立派な土壌分析センターなるものは、何の機能も果たせず、現場と土壌肥料学は、空回りを続けているのです。

 こんな現実に、正面から向かっていった人が今回登場の池上さんです。

 池上さんは、20年近く前、自宅に高精度の土壌分析装置を一式揃え、その後、農家への対応を根気強く実行してきた人です。

 公的機関の分析は無料ですが、反面サンプルを出してからデータが返ってくるまでに時間を要します。彼がこれを1週間以内としていることは、有料化の根拠をしっかりと確立することにつながっていると思います。

 その先のデータの解説と処方の説明にも多くの労力を費やし、分析を依頼する方へのサービスを満足度の高いものにしています。また、研修会を自宅で開催できるように研修施設を建設してその対応をしてもいます。分析結果から良質堆肥や改良資材の投入が必要になる場合が多いのですが、それらの供給体系も同時に構築していて、多くの農協や普及所が絵にかいたモチとして農家農民に指し示したものを、20年余の時間を投資して確立しようとしてきたことが今回の訪問でよく理解できました。

 そして、最も大切な事は、彼自身が実際に施設栽培を長年に渡って実施、経営している人であるということです。

 たとえ専門書をどんなに多く読んでいても、実験を多くやり分析技術を持っていたとしても、そのデータを現場で生かすコンサルティングは、生産現場を良く知っている人でないといけません。

 こんな様々の理由から、農業生産者の中から農業指導者を育てて行くことをしないと、人材は他から得られることはないと思います。

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