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農業経営者ルポ「この人この経営」

美味しさと安全性にはプロとしての責任がある

農産加工は楽しくて止められない


 農産加工も岩崎農園の大事な取り組みだ。栗林が1haほどあるが、栗はおいておくと虫がでる。有機農業派の岩崎さんとしては薫蒸処理はしたくない。何か良い解決策はないかと考ていた時に客の一人から栗の渋皮煮(甘露煮)を教えられた。渋皮煮ならば収穫してすぐに加工できるから薫蒸処理などの必要はない。さっそく技法を工夫して、水戸で催されたレストランシェフの集まりに試作品とし持ち込んでみた。そこで料理のプロたちから「味は特上」との評価を受け、栗の渋皮煮は岩崎農園の看板商品の一つとなった。

 コンニャクも秋から冬にかけての人気の品目だ。水戸周辺はコンニャクの産地ではない。岩崎さんは美味しい手づくりコンニャクを求めて、茨城県北の本場産地を訪ね、栽培方法と手づくり加工の方法を実地に学び、独自の工夫を加え「岩崎農園手づくりコンニャク」を作りあげた。

 こんな具合で、食べ方や加工の仕方はお客から教わることが多いという。岩崎農園には、一般の消費者だけでなく、こだわりの人たちやプロの料理人も多く訪れる。岩崎農園が、主力の仕入先だというレストランもあるそうだ。こうした人たちとの交流のなかからいろいろなヒントが得られる。仕事のおもしろさがここにあるのだと岩崎さんは言う。


若い人たちに農業の醍醐味を伝えたい


 こんな仕事をしている岩崎さんはいま、若い人たちとの農業談義に熱を込めている。自分たちが見つけ出した農業のやり方を若い人たちに伝えたいという気持ちからだ。かなりせっぱ詰まった思いのように見える。若者が集まる場には、忙しさのなかでも顔を出す。そして、一般的談笑ではなく、一人一人とじっくりと話し込む。話の中身は農業の面白さだ。「農業は楽しくなければダメだ」「苦しい壁にぶつかった時が大切だ。壁を破れば必ず途は拓ける」岩崎さんの熱弁は続く。 岩崎さんの悩みは仕事が広がりすぎて、夫婦の労働力だけではカバーしきれなくなってきたことだ。法人化して雇用を入れたらとの助言も受けているが、「自分たちの納得がすべて」という家族手づくり経営をやめるつもりはないようだ。


岩崎勇幸さん
  和子さん

【プロフィール】
茨城県水戸市に隣接する茨城町大戸で直売型農園を夫婦で営む。10年程前に共販組織から離脱して、美味しくて安全な農産物の庭先販売路線に転換した。主力作物はメロン、トウモロコシ、カボチャ、トマト、キュウリ、ナス、コンニャク、コメ等々。「美味しさと安全性は百姓の責任」「消費者との対話のなかから経営の展望が見えてくる」「楽しく生きてこそ百姓」これが岩崎さんの経営哲学である。

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