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特集

農業は食べる人のためにあるー我々は何を共有すべきなのかー
第22回北海道農業機械フェア・イン・上富良野

 聞けば、関東圏への供給はこれまでにも何度か試みたが、物流面や鮮度管理の問題、仕入担当者との息が合わない等、さまざまな理由があって失敗を重ねてきた。だがレタスの品質については誰にも負けない自信もある。今夏、レタス流通で必須と言われる予冷施設も整備した。にもかかわらず肝心の「流通」でつまづくなんて「北海道レタス農家の冥利に尽きない」(?)と近頃とんと世間ではお見受けしない男の意地(?)もあって、ぜひトライアルさせてくれとのお申し出である。

 生産者としての条件は初荷の着荷状態、そして買い手が本当に何を望んでいるかをリアルタイムで知らせること、何度かトライアルを重ねた後、改善すべき点を双方協力して解決していくこと、農協相手の商売ではありえない(?)あくまでも「顔の見える」商売が前提という。おまけに「試験」だから価格も損さえ出なければ問わないときた。

 ただでさえ低い原価を考慮すれば「最初からがんじがらめの契約はしたくない」というのが仕入担当者の本音である。こんなに有難くて前向きな「条件」があろうか。初回はどちらもおっかなびっくりのお試し取引だから「やってみなければわからない」のは当然、でもこれを仕入れ担当者から生産者に言い出すのは勇気がいる(だいたい、スーツ着て名刺を差し出すバイヤーは農家にまず信用されてませんからね)。

 それを先に言われた。こういう生産者もいるのだということはまさに「バイヤー冥利に尽きる」話である。大いに勇気づけられた。

 青果流通はいま、大きく変わろうとしている。「天候のせい」にして戦後の「闇市」さながらの取引がまかり通る時代は終わった。市場の統廃合が進み、農協の弊害が叫ばれる今、他の生産物に遅れをとったとは言え、等しく計画経済に則った商売の仕組みを作り上げる時が来ている。計画的に仕入れるのがバイヤーなら計画的に供給するのは生産者だ。計画性を持つということはあらゆる制約条件や与件を全て飲み込んだ上で何をすれば適正な利益が出るかを問うことである。その答えは自らその答えのある所に求めるしか方法はない。まずは買い手の懐に飛び込む勇気、だろうか。そしてお互いウソをつかないことである。ウソから始まった取引がうまく行った試しがない。

 かつて司馬遼太郎が言っていたが、下手に深謀を巡らすよりも正直に「今これしかないけど、これくらい利益でないとやっていけない」と打ち明ける商売がこれからは必要だと。関西風ではなく、東京の書生タイプの商売、言い換えれば情報開示型の商売こそ求められる取引の基本条件ということだろう。

 ともあれ既成概念を捨てることである。レタスの例は顕著だが、お客のニーズがあるからこそ産地は存在するのだということも覚えていていい。ニーズがせっかくあるものを一産地に任せきりにすることはないのである。「やってみなければわからない」ことをいたずらに怖れて行わないのはもはや生産者として生きることを放棄したも同然と言いたい。せっかく生きるなら「生産者冥利」に尽きる生き方を、ぜひとも期待したいと思うのである。

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