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見えていない風景に気付くために
自転車の前かごに「パトロール中」などと書かれた札をつけたママチャリをよく見かける。乗っている人は買い物中の主婦で、どう見ても「パトロール中」には見えない。自治体で配られた札をぶらさげているのだろうが、あれで本当に効果があると誰か本気で思っているのかと、つねづね疑問だったところに、この本に出会った。
本書は巷に溢れかえっている無内容な看板や標語などを集めて、ドキュメンタリー作家の森達也氏がコメントを加えたものだ。「テロ警戒中」といったよく見かける標語から、意味不明のオブジェ等々、それは我われにとって、もはや空気のように意識されない存在になっている。だが実は「この状態が当たり前になってしまう感覚」こそ恐ろしいと森氏は述べる。
今の世の中は変だ、といえば否定する人はあまりいないだろう。だが、変であることに無感覚であろうとするのが、現在の処世術になってやしないか。本書を読んで町を歩くと、きっと少し違った世界が見えるはずだ。(田中真知)
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