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「人から土地へ」の発想転換
本書は、農業経済学者として知られる著書が、日本農業にレクイエムを捧げる警世の書である。著者が「夏休みの宿題に似ている」と比喩するように、日本の農地問題は難題を先送りし続けたことで混迷を深めてしまった。今や耕作放棄地は農地全体の10%にも及び、台帳の不備で実態把握すらままならない状態になっている。
本書ではこのような事がなぜ起きてしまったのかを、明治大正期までさかのぼって検証している。農地をとりまく歴史をたどりながら、秩序を維持するシステムがいかにして崩壊していったのかを解説しており、もつれた紐の一本一本を見つめ直すことができる。
無秩序化の根底にあるのは、「自分の土地をどう使おうと自分の勝手」という意識の低さだと著者は指摘する。だからこそ今後は「誰が管理するのがふさわしいか」という所有者規制の発想ではなく、「どういう土地活用がふさわしいか」という発想へ転換すべきだと説いている。日本農業再生のための提言が詰まった一冊だ。 (土井学)
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