記事閲覧
忘れなければ覚えられない
現在は記憶力偏重の社会だ。個性や創造性を重視といいつつ、教育システムはいぜんとして記憶力で人間を序列化している。身のまわりにはパソコンやデジカメ、ICレコーダーなどの情報記憶媒体があふれている。個人が扱う情報の量は、10年前に比べても飛躍的に増えたことだろう。だが、人間の脳の仕組みは、何十万年前からほとんど」変わっていないのである。
かのロングセラー『思考の整理学』でも話題になった著者は思考にとっていちばん大事なことは「忘却」であると喝破する。現代人の頭の中は不要なものでいっぱいになっている。中年以降の人間にとって、新しいことを覚えるより、いらない経験や知識を捨てる方が、はるかに人生はうまくいくのかもしれない。
ところが、忘れることは記憶するよりも難しい。記憶は努力でなんとかなるが、忘却は努力してできるものではないからだ。的確に忘れることこそ、創造の源であることを感じさせる痛快なエッセイである。(田中真知)
会員の方はここからログイン
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)