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土壌別経営診断うちの土ではどう作る?

石川県鶴来町・中本正弘さんの場合

 まず土壌に不足している成分がある場合です。これは微量要素でよくある事ですが、その成分が土壌のpHと関係していて、単にその成分を含む肥料を施せば作物に吸収されるということでなく、pHを改善すると同時にその微量要素も与えなくてはいけないという場合です。

 例として、鉄、亜鉛、マンガン、ホウ素などは、アルカリ性では溶けにくくなるために、土壌pHも同時に修正していかないといけません。アルカリ側に傾いた土壌を中性~微酸性に直すには、硫黄華を用いると本には書いてありますが、どのくらい施すとどの程度pHが下がるとか、その効果の持続の問題は全く書いてありません。

 現場で多くの高pHの土を見ていますが、硫黄華を使って改善したデータ作りを是非やってみたいと思っています。

 また今回の例で、ホウ素が小松菜を栽培するには、もう少し高く、1.0ppmぐらいあるといいのではないかと考えましたが、圃場にいってみると、多くの有機物が施されていることがわかり、これだけの有機物が入れられていれば過乾燥もなく、また有機物からのホウ素の供給もあるので、分析で数値化してくるものよりも実際は、もっと円滑にホウ素の供給がなされているものと思います。

 次に分析表で成分過剰が発見された場合ですが、今回の中本さんの場合では、リン酸が適正値より10倍近くオーバーしてます。

 このアンバランスは、いかに他の成分バランスがよくても、作物生理に悪影響を及ぼします。とはいえ、単に多過ぎるものは入れないということだけでは解決しません。現在使っている有機入り化成10―10―10の中のリン酸を除いた有機入りNK化成は、肥料購入先の中ではみあたらないということです。

 チッソ成分を尿素に変え、カリを硫酸カリとするというのも、その施用量が大変少量となることから、雇用による作業体系の中には組み込みにくいという問題もでてきます。また、リン酸の層位による分布も一度調べた上で5cmごとに分析してみる必要もあります。

 野菜の周年作の場合、カリ過剰もよく見られるのですが、中本さんはこの点注意して、カリの入れ過ぎを防いできたとのことです。

 やはり、心掛けは結果に着実に表れるものと改めて思いました。

 そして、分析表が理解できるというだけのことではなく、土壌のメカニズムを理解して農業の計画を立てることが、いかに重要なことかも再認識しなくてはいけません。

 最後になりましたが、雇用による大規模経営の前提となる周年安定高回転栽培には根こぶ病は最大のハードルです。

 中本さんの圃場は、沖積土特有の排水のよい、土層の深い好条件にあり、良質の牛糞堆肥も入れ、リン酸以外のバランスはよく取れた土壌ですが、それでも根こぶ病は悩みのようです。根こぶ病対策に転炉スラグが効果的との情報についての質問もありました。転炉スラグは殺菌としての効果ではなく、総合微量要素としてまず作物根を健全にし、根こぶ病菌に拮抗する微生物群を活性化させる効果を持ちます。根こぶ病は酸性土壌を嫌うので、石灰施用でも抑制効果がありますが、根こぶ病を抑えるpH7程度にするとホウ素、マンガンの吸収が悪くなります。逆に転炉スラグの使用は、前述の理由で微量要素欠乏を起こしにくくします。

 また中本さんの分析例では、pHが6以下の土壌は、場所によって石灰飽和度をあと10%ほど上げて酸性改良をしてもよいので、その際の転炉スラグの施用量は10a当り1000kg程度を入れて15~20cmの耕起をすればよいと考えます。

 pHが6台のところでは反当り600kg程度で苦土石灰から転炉スラグに変えてみるとよいでしょう。

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