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農業経営者ルポ「この人この経営」

風土と信頼で育てる「地種」のネットワーク

 平成11年11月18・19日の両日、(社)日本フードサービス協会主催の「JF食材・産品フェア’99」が東京・浜松町の東京都立産業貿易センターで開かれた。
 平成11年11月18・19日の両日、(社)日本フードサービス協会主催の「JF食材・産品フェア’99」が東京・浜松町の東京都立産業貿易センターで開かれた。本誌では一昨年に引き続き、同フェアに「農業経営者」読者としてのコーナーを設けたが、その中に(有)ナチュラルシードネットワークという団体があった。

 (有)ナチュラルシードネットワークは、その名の通り、各地の土や風土に合った「地種」の更新に取り組む農業経営者や生産者団体のネットワークであり、同時に、全国に散らばる生産者のネットワークを活かしてそれぞれの顧客に対して通年供給の責任を果たしていこうという農産物流通会社である。

 一昨年の産品フェアで本誌コーナーに出展した松本農園(熊本)、黄金崎農場(青森)、駒谷農場(北海道)、寺島農園(山形・千葉)なども、そこでの出会いをきっかけにその中核的な生産者として参加している。農業経営者を役員に迎え、農産物流通会社として正式に法人を発足させたのは平成11年の10月だが、すでに全国45団体(構成農家数6千名以上)がそのネットワークへの参加を表明している。このネットワークを中心になって組織してきたのは千葉県成田市の石井吉彦さん(45歳)である。石井さんが「地種」にこだわった農業経営者のネットワークを作っていこうという意図は何なのだろうか。


「種」を問わずに「有機」を語れる?


 3年前にこの仕事を立ち上げるために退職。それまでの25年間、石井さんは世界救世教の農産物生産・流通組織(MOA)で「自然農法(無農薬・無肥料栽培)」の普及と農産物流通の仕事をしてきた。石井さんはMOAでの仕事を通して、各地の土や風土の中で作り続け伝えられてきた「地種」の持つ意味と価値を知り、将来の農業生産や食と健康のためにその種の保存の必要性を考えるようになった。それがナチュラルシードネットワーク設立の動機だった。

 石井さんが取り組んできた「自然農法」とは、単に「無農薬」というばかりか有機肥料を含めて一切の肥料を使わない「無肥料(=無施肥)」の農法である。それは我々の常識を覆すものである。石井さんの義理のご両親やそれに学んだ農家が取り組んでいる自然農法の実践については、大きな驚きとともに見せていただいたが、その紹介は紙数の都合から別の機会にゆずることにする。

 石井さんはMOAの流通担当者として、食の安全と環境問題を問いつつ「自然農法」だけでなく「有機農産物」の流通を仕事にしてきた。「有機・無農薬」ましてや「自然農法」の野菜であれば、どんな化学物質過敏症の人であれ安心して食べることのできる食品だと信じて疑わなかった。しかし、石井さんにとってショッキングな事件が起きた。

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