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特集

息子よ!後継者は君じゃなくてもよいのだ

小野寺:しないですね。それは親が、「甘やかしたい」という気持ちを持っているからでしょうか。他人の飯を食べさせることは、これからの後継者教育では必要なことだと思うんですね。

横森:これはもう、一番大切なことだね。

木内:じつは私も、全く違う農家に8ヶ月間の住み込みをしたことがあります。そこは有畜複合の施設農家ですが、牛を5頭、田んぼを5ヘクタール位やっています。朝おじいさんと一緒に4時に起きて朝仕事をやり、朝飯を食べて、昼前に田んぼの草を刈って、その草を牛に食わせるというものでした。

横森:やはり、立派な経営者というのは、必ずと言ってよいほど他人の家の飯を食べていますよ。私も、うちに来た研修生達には「お父さん」「お母さん」と呼ばせています。


苦しさの体験からこそ生まれ出てくる農業への夢


昆:経営者の仕事は、8割9割はしんどいことばかりです。しかし後継者たちは、そういう苦しいところに付き合い、その体験を共有することで、大きな夢も共有できるのではないでしょうか。

小野寺:北海道の農業で忙しい時期は、春先と秋しかないので、春と秋の忙しい時期の苦しい場面を見ない人たちは、農業がいいって言うわけです。叶野さんの息子さんが春先に来て1ヶ月経った時に、俺は死ぬかと思ったと言うんですね。夜も昼もなしにトラクタの作業、移植作業、種まきと、めちゃくちゃな忙しさです。それを彼らが経験して一年過ぎて見ると、自分もいい経験をしたと言う。

横森:うちで海外の研修生を受け入れる時に、向こうから甘い研修時間を聞いてくる、国の方でも甘い研修時間を与えている。だけどうちはそういうことは一切無視して、最初に厳しいことを言うのです。それを覚悟して来てくれれば、この人達はものになる。うちは夏場だけですから、夏の本当に忙しい時は朝4時から夜8時まで、ひどい時には9時までやりますよ。それを相手が納得すれば、努力しますから問題は何も起きません。

小野寺:国の方も、認証制度を作って後継者を育てるのであれば、もっと農業研修の制度を見直して、他人の飯を食べて、他人の教育を受けた人を、初めて認定農業者にすればよいと思うのです。ただ単に「認定農業者にはお金を貸しますよ」といった甘い話ばかりではなくて、そういったことを根底に据えていかないといけない。いままでの制度でも後継者は育つかも知れませんが、でも経営者は育たないと思います。

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