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BOOK REVIEW

木―植えて・育てて・伐る そして植える

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著者:中本利夫
定価:1,359円(本体)
 出版社:講談社出版サービスセンター



「ま、やめて。おとうさん。そんなに悪いことしていたの。恥ずかしくて友だちにもいえない。社長さんに言って仕事変えてもらいなさいよ」―ショックなことを言われてしまったのは、とある建材会社の資材部長。原木の買い付けに東南アジアへ出張に行こうというとき、その目的を聞いた娘が放った一言だそうだ。ことほど左様に今、林業関連業種に携わる人の立場はツライ。ひところさかんだった、ショーアップされた熱帯雨林保護運動に端を発し広がった地球環境問題は、人々の間に浸透するにつれ単純化されていく。反論が聞こえてこないことをいいことに叩くだけ叩く一般マスコミの情宣効果も手伝って、世の中が短絡的な反応を引き起こす様は、農業者にとってもお馴染みの光景だろう。そこで反論登場。「森林は地球環境保全の重要な担い手であり、その森林を守りながら地球上で唯一再生産可能な工業資源である木材を生産していくという作業を両立させていくのが林業だ」と主張する著者は、くだんの社長さん。造林、伐採、製材と、長年林業現場にトータルに関わってきた体験をフル稼働し、しかし穏やかな口調で森林、林業や木材の持つ効用を語っていく。皆伐の危険性など、行き過ぎた一部業者のやり方に心を痛めもしながら、丹念に誤解を解いていこうとする筆致は、著者の持つ林業に寄せる愛情の深さを割り引いても説得性に足るものと感じる。


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