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「農」の方位を探る。
厳しい状況に直面している農業の今後を支えるキーポイントは何か?農業に関わる者なら誰もが抱くこの疑問を、生命系の循環の空間を表わす言葉「農」という観点で捉えたユニークな季刊誌。本書はまずPART1、2で「もはやどうこういっても始まらない」農政の現況を戦後50年の歴史を通して批判的に整理、把握する。そこで大切なのは有機農法、産直、職業としての農業といった個々の農業者の主体的な営みだ、とここまではよく言われることなのだが、本書はPART3でそれらを「記号化した商業システムの論理」に過ぎないと批判する。姿勢が悪いわけではない。巧みな理論に裏付けられたそれらの工夫が純粋な農業を営む農家を非難するという、善悪二言論的な価値観の画一化を招くことがよくないのだ。ではどんな発想が必要か? PART4によれば、それは自然に畏敬の念を抱き、生命的な循環の中で生かされている人間の可能性に目を向けることだという。これが「農」の空間であり、理論や規範ではなく感性や感覚的なアプローチで捉えるのだ。PART5では日本一の長寿村、山梨県棡原村のルポを通して具体的に「農」のあり方を考える。このような発想はついつい意識の底に眠ってしまいがちだが、現況を整理して「その先」に想いをはせる同誌の視点はどこかで持っておきたいものだ。
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