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土壌別経営診断うちの土ではどう作る?

群馬県倉渕村・佐藤勝美さんの場合

 このことにより、土壌中の石灰だけが増加して、苦土石灰を施す場合のように石灰と苦土の両方がバランス良く与えられるということが無くなり、その結果、土壌pHは適正域より上昇し過ぎてしまい、これによる微量要素、特にホウ素亜鉛、マンガン等の欠乏、そして何よりも苦土つまりマグネシウムの欠乏が生じたのです。

 この時点で、作物生育に観察力の鋭い佐藤さんは、有機施用にだけ力点を置いた自らのやり方に疑問を持ち、土壌分析を実施しました。その結果、場所によってはpHが8.3というところまで石灰が過剰となり、そこに育つ野菜類は、葉色が黄色がかった冴えのない状態となってしまい、当然味も評価の悪いものとなったということです。

 この原因究明は意外と簡単だったようで、石灰の多過ぎることと、マグネシウムが極端に少ないことでした。そこで、硫酸マグネシウムを施すことと、石灰の施用を中止したことで、正常な状態に戻すことができたということです。

 現在、消費者の間で強く求めらている有機栽培は、多くの問題を含んでいます。有機百パーセントであれば土壌のバランスがうまく保たれ、作物は健全に育つという考え方は、一時的にはそうであっても長期間それを続けると、成分バランスの崩れる不都合が生じます。有機肥料は施用量が多いことが通常なので、ひどい歪みになってしまのです。

 佐藤さんは、有機による腐植の増加が土の保肥力を高めることを知っていますが、それに頼る前にゼオライトによる保肥力向上や、ボカシ肥料によるアンモニア吸着を有機過剰の防護策にしています。

 日本も今後環境問題という観点から、有機廃棄物を資源として農地へ還元することが多くなると思いますが、持続して有機の長所を圃場で発揮させるには、前述のような注意が実は、水耕やロックウール栽培よりも必要なのです。

 水耕やロックウール耕は成分のアンバランスがすぐに結果として表われますが、土壌に有機を与え続けた結果生じる成分の歪みは、土の緩衝作用を有機物が高めてくれる最高点に達した後に発生するので、大変な重症となります。

 このことを今から有機農産物の認証などの進め方の中で注意していく必要があります。

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