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養殖用の貝は中国・北朝鮮から輸入
養殖用のハマグリは初め、地元の魚市場から3cmほどの貝を7千個買った。これを1カ月養殖すると平均2割も太った。手ごたえ十分だ。特許をもつSAI社の技術者、Dr.J・ベネマンさんもやってきて、環境や設備に太鼓判を押してくれた。
これが95年12月31日付けの南日本新聞の第1面記事になり、画期的な事業と評価された。以後、稚貝、成貝を中国や北朝鮮から直接買い付けるなど事業は本格化。2年ほど経ち夏に輸出国を訪ねると、30度を超す戸外でハマグリの出荷作業が行われているのを発見、これでは搬送中に弱ってしまうからと、直ちに作業を改善させ、貝の死滅率低下に結び付けた。ほかにも養殖貝の密度とかCO 2 の混入度合いなど試行錯誤を重ねて一つ一つ問題点を克服していった。
98年3月、肥後さんはI支店長などに働きかけ9人で2300万円を出資、ハマグリ事業のための会社「シーアグ・ジャパン」を設立した。98年度1億1千万円を売った。従業員は3人、まだ十分な給料は払えないが、黒字決算となった。99年度には1億5千万円の売上が目標だ。
稚貝を自給生産、5年後に30億円
肥後さんはこの2月にも中国のアモイに行った。ハマグリは海岸から2km沖で細々と獲っている有り様で、乱獲による資源枯渇がひどいという。だから中国でも北朝鮮でも、輸出能力がなくなるのは時間の問題、と見ている。市場価格も上がるだろう。かくして5年後、自社の生産量を上げ、販路を拡大して売り上げ30億円を目論む。
生産量アップの決め手は自ら稚貝を生産すること。ハマグリは稚貝を2cm大ぐらいまで育てるのが難しく、日本にはいないその技術者をアメリカから連れてきて、稚貝の“自給態勢”を何としても実現する構えだ。そのための実験棟を、99年12月に新設した養殖棟の隣りに県の補助一千万円を得て建設中で、着々と手を打っている。
ハマグリは1.5kgで3千円(S)~5千円(L)。全国の高級料亭やレストランのほか個人客へ産直している。インターネット通販もしており、販売力強化にもぬかりはない。
シーアグのこうしたチャレンジは、県内外の耳目を集めている。鹿児島半島側の頴娃町は98年に4億円を投じて養殖池を建設、町営の事業としてハマグリ養殖を始めた。販売額の一部をロイヤリティとしてシーアグに払う約束だが、町の将来をハマグリに賭けたといえるほどの意気込みなのだ。
最後のターゲットは乾燥飼料の製造
この珪藻は、もっと大きな可能性を秘めている。肥後さんが着目しているのは、これを畜産の飼料にできないかということだ。すでに珪藻を乾燥させて試作品もつくったといい、前述の実験棟が完成し次第、本格研究を始める。「最後のターゲットは飼料の開発。ハマグリの100倍の事業規模は間違いない。何とかして成功させたい」と肥後さんは並々ならぬ意欲を見せる。
日本の畜産が、いや世界の食料事情が一変する壮大なプランといっていい。ベンチャー・キャピタルから投資話が舞い込んでおり、肥後さんはシーアグの株式上場を検討し始めているという。
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