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特集

改めて『尊農開国』

農家A でも生産者は、自分の作ったモノを、自分で値段をつけたいというのが悲願ですが。

土門 誤解もはなはだしいね。値段は、マーケットがつけるもんなんだよ。生産者は、そのマーケットがつけた値段を、そのままマジックで値札に書くだけだ。

農家A 資本の回転効率のアップ以外に、コストを下げる余地はまだありますか。

土門 まだまだある。例えば地代(標準小作料)。これはまだまだ高すぎる。10アールで2俵近く払わされているケースもある。農業委員会にかけ合って下げさせるべきだ。地代はこれからの産地間競争のポイントになるからな。それに生活コストも下げるべきだ。都会のサラリーマンより派手な生活を送っている。肥料や農薬をケチったり、業者を呼びつけて買いたたいているのに、毎晩飲み歩いている農家も多いからな。つまらぬところで無駄使いして、肝心なところに銭を使わない。こんな農業では21世紀に生き残れないよ。

農家A 耳が痛いですね。でも規模拡大に疑問を抱く農業者もいますが。

土門 規模拡大イコール絶対の生き残り条件ではない。規模拡大で投資コストが増えて経営を圧迫しかねないことだってある。あくまで条件が合えばということだ。

農家A その条件とは。

土門 何よりも農地価格だ。もっと地価を下げないと規模拡大による効果は期待できない。政府がなすべきは、この一点なんだ。今は農業も満足にできない農地所有者の既得権益を守らんがために、農業委員会が農地価格をわざわざ高くしている。農業改革に、農業委員会の全面改組が避けて通れないのは、この点を言うのだ。

農家A 園芸はどうですか。

土門 最大のポイントは適地適作になっていくだろう。競争激化の時代ほど、基本に戻れというほかはない。その地に合った作物を、いい種を使って、その地に合った方法で作るということだ。それには徹底した土作りが求められる。北海道栗山町に農事組合法人勝部農場を経営する勝部征矢さんという人がいる。勝部さんは、「投資すれば、毎年、宝くじに当たるようなものだ」と喝破されておられる。けだし至言だ。

農家A 淘汰選別の対象となるのは、土作りもできない農家になるのですか。

土門 そうだ。土作りも満足にできぬ農家が、農業を営めるところにニッポン農業の矛盾があり、その農家によって構成されている農協の混迷があるんだ。漫然と農業を営んでいる農地所有者が、早く農業をやめてくれれば、ニッポン農業は少しはまともになれるし、輸入農産物に脅えることもないんだ。

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