ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

改めて『尊農開国』

【均平の次に来る漏水問題】

昆 均平の問題以外に、大規模圃場において技術的に解決すべき問題というと。

藤森 漏水の問題です。最近の私の研究の重要な部分の一つが漏水対策です

桜井 乾田直播を行うに当たって、最大の問題は漏水なのです。代掻きをしませんからね。稲は大量に水を必要とします。それにモグラやネズミにも漏水の原因を作られてしまう。

藤森 水田からの漏水は、まず蒸発散があります。そして土中を通って地下へと出ていくものがあります。しかし、調べてみると漏水で最も大きいのは畦畝からの漏水なのです。畦畝を見てみますと、田面から3~4cmまではいいのですが、それ以上水を張ると一気に水が抜けてしまいます。すると、例えば桜井さんの圃場のような泥炭地では、畦畝を作っても2ヶ月で痩せてしまうのです。それに対して、今までは畦シートが使われていました。しかし、畦シートは畦畝の下まで入るわけではありませんので、その下にモグラやネズミが穴を開けてしまい、いつまで経っても水が溜まらないということになる。農家さんは、用水側だけで水管理をすることが多いですから、そうすると排水側へまわったら何も水がないということがあります。必ずしも全体に水が流れているわけではないのです。稲の生育に従ってだんだん先が見えなくなってしまうので、そういう事態が起こるわけです。桜井さんは自ら漏水のことに気付かれて、畦畝下まで防水シートを入れています。それぐらいやらないと漏水は止まらないのです。桜井さんのところでは漏水が従来の半分くらいになっているかと思います。

桜井 そうです。田面の均平ができたら次は漏水をどれだけ防げるかですね。これは除草にも収量にも影響します。

藤森 桜井さんのところみたいに、麦や大豆を集団的に転作している場合はよいのですが、隣が畑でこちらが水田では、当然水は畑の方へ移動しますから漏水がはげしくなります。例えそれが道路で仕切られていても、道路は表面だけのものですから、その下は簡単に浸透してしまいます。遮水は重要なことなのです。


【汎用性水田の可能性】

昆 稲作経営だけの中で考えるのではなく、水田はレベルの高い農業装置と考えると、水田で他の作物を作ることが可能でしょう。臭化メチルがこれから使えなくなるなど、野菜産地での不安定要因が増えています。従来の野菜産地も崩れていくところが出てくるでしょう。その時、水田の持つ意味というのが大きくなるのではないでしょうか。3年5年野菜をやった後水田に戻して、また改めて野菜をやる。その意味で、遮水ができることはその自由度を増すことになるのですね。

藤森 そういうことだと思います。神戸の西ノ京はキャベツの大産地です。あそこは、水を張ることをうまく組み合わせることによって成功した事例です。これからはそういう形をとらざるを得ないでしょう。桜井さんのところは畑作物と水田が別になっていますが、そのうち水田の中で畑作物を作るようになりますよ。

桜井 なりますね。

昆 水田の場合、道路網がより整備されているわけですから、なおさら汎用性を持たせることができる。

藤森 汎用水田として暗渠も入れらます。それは畑地以上なのですね。畑は地下水のコントロールができない。水田はできる。しかし、そうなってくると問題は、畑作物にあった土にしないといけないということです。今は稲作を対象とした土でしかないですから。

関連記事

powered by weblio