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特集

改めて『尊農開国』

【儲かる前の手前の話し】

昆 稲作だけではなく、汎用水田としての技術背景が整ってきている。

藤森 技術は整ってきているのですが、農家さんたちが米に偏重し過ぎていたのです。ところが今、減反により別の物を作らざるを得ない状況になってきた。ところが米を作る技術力しか持ち合わせてない。そうなると、桜井さんたちのような技術集団にますます集約されていくであろうと思うのです。

桜井 水田に畑作物が入りやすい状態になる。そうすると、どういった作物を入れたらよいのかといった判断力が必要となる。今までは田圃だから稲だけ作っていればよかったし、稲の流通だけ知っていればよかった。今度は、麦の流通も、野菜の流通も考えないといけなくなるということは、考えることが相当要求されるわけですね。

昆 桜井さんが基盤整備にお取り組みになった契機を、簡単にお話しいただけますか。

桜井 かつてうちの辺りの田は機械が入らないほどの強湿田でした。そして私が就農した当時、春作業の時に自分の田圃から50mも100mも先から水をさらわないと用水が得られなかった。だからその仕事を誰も始めない。後からやれば人のさらった水を入れられるのですが、私は他の仕事をやっていたので、人よりも先に仕事を始めないと皆と終わりが一緒にならない。だから自分から水路をさらう必要があったわけです。それに加え、休耕田が増えてきている。トラクタできれいにすればいいのですが、うちの辺りはトラクタですら落ちてしまう田圃。そういうところだからこそ、みなが休耕にしてしまっている。そうなると水が流れない。だから、農業をやりたいという人でも上の田圃が休耕されると、自分の田圃をやるためには倍の労力がかかってしまう。ならば、自分も休耕してしまおうとなるわけです。次々と休耕田が増えてしまいました。そういうところまで来てしまったのです。それで、これを解決するためには土地改良という手段しかないと思いました。土地改良をして、どこでも大型トラクタが入れるようになれば、一旦荒れた田圃も回復するのは早い。では土地改良をしたら誰が耕作するんだ、という話しになった。それぞれが前のようにやるのでは採算の合う経営とはならない。ならば協業経営でいこう。ではみなさん出資金を出して下さい。会社を作りましょう。補助金を使って機械を入れましょう。みなで働いて出来上がったものは、みなで労働に応じて分配しましょう。簡単に言えばこれが私たちのシステムです。その基本にあるのは、集落の農地を守るということです。誰かが病気でできなくなった、子どもがいないからできなくなったといったときには我々が引き受けていく。そういう形でみなが農業をやれるようにと考えたシステムです。そういったシステムが出来上がっていれば、自分一代で終わってしまう場合でも、ではあなた方に頼むよとなれるし、子どもが継ぐ場合でも仲間に入ればいい。

昆 集落の農地はどのくらいの面積ですか。

桜井 60haです。

昆 60haは全部、基盤整備をされた。

桜井 はい。

昆 関係する農家は何戸ですか。

桜井 209戸。

昆 209戸の農家を説得するのにどのくらい時間を要しましたか。

桜井 9年間かかりました。

藤森 一人3反部ないのですね。

桜井 平均30aです。

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