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【村井信仁の作物別・畑作野菜経営機械化講座】
長いもの機械栽培その3収穫作業
- 農学博士 村井信仁
- 第23回 2000年04月01日
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長イモの栽培面積があまり増えないのは、種子イモの手当てが容易でないことの他に、収穫が重労働であるからである。
そこでこれ迄様々の収穫機が開発されたが、何れも満足できるものではなかった。長イモを浮かすことはできても、腰を屈めての抜き取りでは労働負担の軽減には成功したとは言えず、また長イモは傷が付きやすい作物であり、傷を付けては価値が半減してしまうからである。
しかし、ある程度栽培面積が増えると、力で押し切ることもできるものである。長イモリフタでは限界ありと悟ると、開き直って畦間を大きく掘削し、作業者がその溝に入って両側の長イモを掘り取ることはどうかとなった。
トレンチャの技術が発達した時代的背景もあり、まんまとこれに成功した。トレンチャは各部が磨耗しやすく、そのメンテナンスの費用が経費を押し上げるとされたが、工業が発達し特殊鋼が入手しやすくなると、磨耗問題は相当の面で改善されてしまった。また、大型トラクタが一般化すれば、動力源にも不足するものではない。こうして長イモリフタの時代から、一気にトレンチャの時代へと移行した。
長イモリフタの問題点は、長イモがリフタで押し上げられた時に、タイミングよくこれを掴んで抜き上げなければならないところにあった。人間は、色も形も臭いも識別して作業する、凄いコンピュータ能力を持ったロボットである。一日当たり一万円前後でレンタルできることからすれば、これを利用するのは当然となるが、この人間ロボットの盲点は「持つ」「歩く」「屈む」作業を不得手とすることである。この三つが重なると三重苦となり、誰がそんな作業をするものかとなる。リフタの後に付いて長イモを抜き上げる作業は、まさにこの三重苦なのである。当初はよいとしても長くは受け入れられる訳がない。
長イモが押し上げられた時にタイミングよく掴み取れば、比較的楽に作業はできるものの、タイミングをずらしてしまえば長イモは元の位置に戻る。そうなると抜き取りは結構力の要る作業となる。長イモを握る力も強くなれば、そこに損傷を与える結果となり、商品性を落としてしまうことにもなってしまう。
人間ロボットは意志があるので、機械を使うのは良いとしても、機械に使われる形になるのは極端に嫌うものである。長イモが押し上げられた時にタイミングよく掴めなどと言うのは、機械に使われるようなものである。肉体的な疲労の問題ばかりでなく、感情的にもついていけないものである。
そこでこれ迄様々の収穫機が開発されたが、何れも満足できるものではなかった。長イモを浮かすことはできても、腰を屈めての抜き取りでは労働負担の軽減には成功したとは言えず、また長イモは傷が付きやすい作物であり、傷を付けては価値が半減してしまうからである。
しかし、ある程度栽培面積が増えると、力で押し切ることもできるものである。長イモリフタでは限界ありと悟ると、開き直って畦間を大きく掘削し、作業者がその溝に入って両側の長イモを掘り取ることはどうかとなった。
トレンチャの技術が発達した時代的背景もあり、まんまとこれに成功した。トレンチャは各部が磨耗しやすく、そのメンテナンスの費用が経費を押し上げるとされたが、工業が発達し特殊鋼が入手しやすくなると、磨耗問題は相当の面で改善されてしまった。また、大型トラクタが一般化すれば、動力源にも不足するものではない。こうして長イモリフタの時代から、一気にトレンチャの時代へと移行した。
長イモリフタの問題点は、長イモがリフタで押し上げられた時に、タイミングよくこれを掴んで抜き上げなければならないところにあった。人間は、色も形も臭いも識別して作業する、凄いコンピュータ能力を持ったロボットである。一日当たり一万円前後でレンタルできることからすれば、これを利用するのは当然となるが、この人間ロボットの盲点は「持つ」「歩く」「屈む」作業を不得手とすることである。この三つが重なると三重苦となり、誰がそんな作業をするものかとなる。リフタの後に付いて長イモを抜き上げる作業は、まさにこの三重苦なのである。当初はよいとしても長くは受け入れられる訳がない。
長イモが押し上げられた時にタイミングよく掴み取れば、比較的楽に作業はできるものの、タイミングをずらしてしまえば長イモは元の位置に戻る。そうなると抜き取りは結構力の要る作業となる。長イモを握る力も強くなれば、そこに損傷を与える結果となり、商品性を落としてしまうことにもなってしまう。
人間ロボットは意志があるので、機械を使うのは良いとしても、機械に使われる形になるのは極端に嫌うものである。長イモが押し上げられた時にタイミングよく掴めなどと言うのは、機械に使われるようなものである。肉体的な疲労の問題ばかりでなく、感情的にもついていけないものである。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
村井信仁の作物別・畑作野菜経営機械化講座
北海道での畑作野菜経営成立の背景には、農業機械化による生産技術の革新があった。その機械化が、大規模な野菜栽培を農業の原理原則に従う技術集約へと向かわせる可能性を与えた。そこで、北海道農業機械化の中心的な指導者として、開発と普及の両面からその役割を果してきた村井信仁氏に、畑作野菜の機械化経営技術をご解説いただく。その解説は、これから府県での畑作野菜経営を発展させようと考えている経営者にとって多くの示唆を与えるだろう。一方、北海道の経営者にとっては、農業経営の原理原則に立ち返った技術の再確認と新たな可能性を示すことになるはずだ。(編集部)
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