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村井信仁の作物別・畑作野菜経営機械化講座

長いもの機械栽培その3収穫作業

長イモの栽培面積があまり増えないのは、種子イモの手当てが容易でないことの他に、収穫が重労働であるからである。
長イモの栽培面積があまり増えないのは、種子イモの手当てが容易でないことの他に、収穫が重労働であるからである。

そこでこれ迄様々の収穫機が開発されたが、何れも満足できるものではなかった。長イモを浮かすことはできても、腰を屈めての抜き取りでは労働負担の軽減には成功したとは言えず、また長イモは傷が付きやすい作物であり、傷を付けては価値が半減してしまうからである。

しかし、ある程度栽培面積が増えると、力で押し切ることもできるものである。長イモリフタでは限界ありと悟ると、開き直って畦間を大きく掘削し、作業者がその溝に入って両側の長イモを掘り取ることはどうかとなった。

トレンチャの技術が発達した時代的背景もあり、まんまとこれに成功した。トレンチャは各部が磨耗しやすく、そのメンテナンスの費用が経費を押し上げるとされたが、工業が発達し特殊鋼が入手しやすくなると、磨耗問題は相当の面で改善されてしまった。また、大型トラクタが一般化すれば、動力源にも不足するものではない。こうして長イモリフタの時代から、一気にトレンチャの時代へと移行した。

長イモリフタの問題点は、長イモがリフタで押し上げられた時に、タイミングよくこれを掴んで抜き上げなければならないところにあった。人間は、色も形も臭いも識別して作業する、凄いコンピュータ能力を持ったロボットである。一日当たり一万円前後でレンタルできることからすれば、これを利用するのは当然となるが、この人間ロボットの盲点は「持つ」「歩く」「屈む」作業を不得手とすることである。この三つが重なると三重苦となり、誰がそんな作業をするものかとなる。リフタの後に付いて長イモを抜き上げる作業は、まさにこの三重苦なのである。当初はよいとしても長くは受け入れられる訳がない。

長イモが押し上げられた時にタイミングよく掴み取れば、比較的楽に作業はできるものの、タイミングをずらしてしまえば長イモは元の位置に戻る。そうなると抜き取りは結構力の要る作業となる。長イモを握る力も強くなれば、そこに損傷を与える結果となり、商品性を落としてしまうことにもなってしまう。

人間ロボットは意志があるので、機械を使うのは良いとしても、機械に使われる形になるのは極端に嫌うものである。長イモが押し上げられた時にタイミングよく掴めなどと言うのは、機械に使われるようなものである。肉体的な疲労の問題ばかりでなく、感情的にもついていけないものである。

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