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【今年の市場相場を読む】
輸入の増加と市場相場(上) ネギ、トマト、ゴボウ、サトイモ
- (株)農経企画情報センター 代表取締役 小林 彰一
- 第46回 2000年04月01日
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ネギ 意外に支持された中国産。再度、用途や品質の検討を
【概況】
平成11年のネギの輸入量は、前年より7割以上増加して3万2千t。これに対して東京市場へは、前年の3.2倍の1,946tが入荷した。全体の輸入量に対して6%が東京市場に入荷したことになるが、通常は東京市場の全国に対する割合は10%程度であるため、輸入ネギの市場流通率は6割程度と推計できる。これによって、東京市場における輸入ネギの割合は、前年の1.1%から3.3%までに拡大した。東京市場での輸入ネギのシェアは特に11年の9月以降増えた。とりわけ11月は6.3%になり、青森、千葉、茨城に次ぐ「産地」となり、この月のネギ全体の平均単価は203円と、前年同月の55%安になった。
【背景】
一見すると、輸入品の影響で国産が安値になったようだが、そもそも輸入が増えたこと自体、平成10年の秋の異常な高値=品薄がもたらしたものであり、11年の5月までは高値基調が続いていたのである。この間一貫して輸入ネギが入荷し、問題になっている昨年の秋には、ネギの入荷は平年並みに回復するのであるが、輸入品も入荷の勢いが衰えなかった。国産そのものは回復していたが、これだけ中国産がコンスタントに入荷したことで、中小・零細な業務筋などに需要が定着したことは事実である。なにしろ年間を通しても平均単価は117円、秋には50~80円という単価になったのでは、刻んでしまうような用途には十分。見た目は良くないが、辛味が非常に強いだけに、薬味としてはむしろ歓迎されている面もある。
【今後の対応】
中国産は確かに脅威であることに違いはない。安いだけならまだしも、末端需要で支持されている理由のひとつはその辛味だ。考えてみれば、ネギにおける「品質」とは何であったのか。薬味にして辛く香りがあり、煮て甘くなる等々だとすれば、国産が外見にとらわれすぎて“品質”に無頓着になっていたのではないか。用途別にキチンと調理提案できていない、生産側のこだわりを消費側に伝えていない、などの反省材料が見えてきそうだ。軟白ネギは手間隙がかかる。どうしても単価の下限はあるだろう。しかし、ここで需要別、用途別の生産・出荷のあり方をもう一度検討して、それに応じた手間の掛け方などを検討していかなくてはならないだろう。
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小林 彰一 コバヤシショウイチ
(株)農経企画情報センター
代表取締役
青果物など農産物流通専門のジャーナリスト。(株)農経企画情報センター代表取締役。「農経マーケティング・システムズ」を主宰、オピニオン情報紙『新感性』を発行。著書に、『ドキュメント青果物市場』、『日本を襲う外国青果物』、『レポート青果物の市場外流通』、『野菜のおいしさランキング』などがあるほか、生産、流通関係紙誌での執筆多数。
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