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植物の力 その神話と科学

栽培植物の抵抗力

【●ファイトアレキシンという物質】

友人Y そうそう。特に後に作る抗菌性物質、ファイトアレキシンって呼ばれている物質が抵抗力の違いを生み出していると思うよ。本来栽培植物が作らないけれど、病気に感染したときだけ作る低分子の抗菌性物質なんだ。これをいち早く作る作物っていうのは、病気にかからない。ところが、もたもたしてそれを早く作らないと、菌がどんどん中に入っていって、罹病してしまう。よく読むと、ファイトアレキシンは、栽培植物が生成する単一の物質名ではなくて、イポメアマロンとかリシリンとか抗菌性を持っているたくさんの化学物質の総称みたいだよ。

筆者 やっと思い出したよ。そのファイトアレキシンってヤツををパッと出させる物質をエリシターっていうんだ。さっき言っていた抵抗性を人為的に高める技術というのは、感染する前にワザとファイトアレキシンを作らせるために病原菌じゃない別なモノをあげてやることなんだ。つまり、そうすると、栽培植物は菌に感染したと間違って認識して、ファイトアレキシンを作ってしまう。栽培植物は、エライ事になった、と一種の誤認識をして緊急事態への対応をとる。軽く感染させ誤認識のシグナルを出させることで、抗菌性や硬化の作用を総動員で働かせる。だからも後から本当の病原菌が来ても、すでにそれをブロックする体勢ができているわけだ。これが、病気にかかりにくくする仕組みというわけさ。

友人T なるほどね。人が栽培植物に早とちりさせるんだけど、結果として栽培植物を守ってあげてるってことね。菌をわざわざ殺さなくても栽培植物が全部ブロックできるようになるんじゃないの。

友人Y そうなればいいんだろうけど、人間や動物でも予防接種だけじゃあ病気に勝てないように、栽培植物にも今のところ色々な薬がいるんだよ。俺たちが、食っていくためにはね。

筆者 なんとなく栽培植物の力をポジティブに使う方向性はみえてきたな。今日は本当にありがとう。これで、なんとか原稿書けそうな気になってきたよ。

(浅川芳裕)

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