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【植物の力 その神話と科学】
植物の潜在能力を再構築せよ!
- 農業ジャーナリスト 浅川芳裕
- 第4回 2000年08月01日
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植物学者によれば、世界の主要穀物が直面する害虫は1万種類、雑草は1800種類、病害が1050種類あるという。
疲れた植物の体に「サロンパス」をどうぞ!なんて言うと、CMの宣伝文句みたいだが、幾ばくかの真理がこめられている。別の宣伝文句でも同じだ。植物が頭痛を訴えたら、「バファリン」を。植物の血行促進に「メンソレータム」がオススメ。植物にイボができたら「イボコロリ」などなど。
植物に肩や頭や血はないかもしれないけど、病気にはなる。何の話かというと、「サロンパス」「バファリン」「メンソレータム」「イボコロリ」の主要成分であるサリチル酸が、植物が病気に抵抗するための強力な武器だと分かってきたのだ。
人や動物と違って、植物は侵入者を妨げる免疫システムを欠いている。でも、植物には植物独自の策がある。最初の防衛線となるのは、植物が着込んでいるセルロースやワックスといったコートだ。それは植物の表面を覆うクチクラ層のような物理的な防御策で、よっぽど悪質なカビ・バクテリア・ウィルスでない限り、十分ブロックしてくれる。
次の策は、「枯葉」作戦だ。侵入者が最初の防衛線を突破すると、侵入(感染)された近くの細胞は、突如身を躍らせ自殺する。だしぬけに死者(細胞死)に囲まれた侵入者(病害)は、恐れおののき進路を断たれる。しかし、この封じ込め作戦は、いつもうまくいくとは限らない。
前進する侵入者に必死に抵抗する細胞だが、貧弱な剣しか持ち合わせていない。前線の兵士は苦悩の声をあげるしかない。外敵の侵入を受けたという悲痛なメッセージは、ある種のシグナルとなって植物全体に響き渡る。シグナルからの情報を受けて立ち上がるのが、実はサリチル酸なのである。最後の勇者サリチル酸は、雄叫びをあげどんどん盛んになっていく。サリチル酸は、グルカナーゼやキチナーゼといった外敵と戦える若き兵士(PRプロテイン:抗菌活性を持つ感染特異的タンパク質)を伝令に送り、彼らを各戦線に配置する。そして、そのPRプロテインが、最終的な抵抗戦線を誘導するのだ。これで、確固たる防衛網が完成する。植物全体は、ありとあらゆる侵入者に立ち向かう準備が整った。それが最初の防衛線を突破した侵入者と別の種類の病害であったとしても構わない。こうして発動された植物の抵抗性は、免疫原以外の病原体にも有効なのだ。
このような防衛システムは“全身獲得抵抗性”と呼ばれ、略してSAR(Systemic Acquired Resistance)という。
植物が疲れたときは?
疲れた植物の体に「サロンパス」をどうぞ!なんて言うと、CMの宣伝文句みたいだが、幾ばくかの真理がこめられている。別の宣伝文句でも同じだ。植物が頭痛を訴えたら、「バファリン」を。植物の血行促進に「メンソレータム」がオススメ。植物にイボができたら「イボコロリ」などなど。
植物に肩や頭や血はないかもしれないけど、病気にはなる。何の話かというと、「サロンパス」「バファリン」「メンソレータム」「イボコロリ」の主要成分であるサリチル酸が、植物が病気に抵抗するための強力な武器だと分かってきたのだ。
人や動物と違って、植物は侵入者を妨げる免疫システムを欠いている。でも、植物には植物独自の策がある。最初の防衛線となるのは、植物が着込んでいるセルロースやワックスといったコートだ。それは植物の表面を覆うクチクラ層のような物理的な防御策で、よっぽど悪質なカビ・バクテリア・ウィルスでない限り、十分ブロックしてくれる。
植物の防衛システム
次の策は、「枯葉」作戦だ。侵入者が最初の防衛線を突破すると、侵入(感染)された近くの細胞は、突如身を躍らせ自殺する。だしぬけに死者(細胞死)に囲まれた侵入者(病害)は、恐れおののき進路を断たれる。しかし、この封じ込め作戦は、いつもうまくいくとは限らない。
前進する侵入者に必死に抵抗する細胞だが、貧弱な剣しか持ち合わせていない。前線の兵士は苦悩の声をあげるしかない。外敵の侵入を受けたという悲痛なメッセージは、ある種のシグナルとなって植物全体に響き渡る。シグナルからの情報を受けて立ち上がるのが、実はサリチル酸なのである。最後の勇者サリチル酸は、雄叫びをあげどんどん盛んになっていく。サリチル酸は、グルカナーゼやキチナーゼといった外敵と戦える若き兵士(PRプロテイン:抗菌活性を持つ感染特異的タンパク質)を伝令に送り、彼らを各戦線に配置する。そして、そのPRプロテインが、最終的な抵抗戦線を誘導するのだ。これで、確固たる防衛網が完成する。植物全体は、ありとあらゆる侵入者に立ち向かう準備が整った。それが最初の防衛線を突破した侵入者と別の種類の病害であったとしても構わない。こうして発動された植物の抵抗性は、免疫原以外の病原体にも有効なのだ。
このような防衛システムは“全身獲得抵抗性”と呼ばれ、略してSAR(Systemic Acquired Resistance)という。
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浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
植物の力 その神話と科学
植物を栽培することから、人は自然の一部として自らの循環を学んだ。神話の創造は、その学習の結実だった。やがて、植物のメカニズムを探ることから、科学が芽生えてきた。科学力によって、食物の確保は安定して、人の数は増えつづけた。未曾有の人口増加は進み、人は今、種として地球上で絶頂期をむかえている。同時に、地球規模の食物危機に直面し、さらなる植物生産性の向上を追求せねばならなくなった。対処療法的な生産技術の開発だけが、本当の解決法になるのだろうか。新しい解を求めて、人は再び植物のメカニズム、抵抗する力そして進化する力に注目しはじめた。植物本来の力を知るためには、人も本来の神話する力、科学する力を取り戻す必要があるようだ。
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