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農業経営者ルポ「この人この経営」

牧場から自然の恵みを
不易流行という経営者意識

 そのために、手狭になった工場を新設して(現在・着工中)、製品規模の拡大に対応しようとしている。

 さらに展望は広がっている。

 「農業・酪農」が単に食料や食品の原料を生産するだけではなく、命の循環の価値を見直し、楽しみながら農業・酪農を肌で感じ取れる「ふれあい牧場」の様なものも出来ないかと模索している。

 農業には、心の安らぎや癒しを与えるパワーもある。更に地球環境にも一番密接に関係している。そんな多機能の部分を大切にし、多様な農業・経営形態をも追求したいと言う。

 農業を今一度見直し、農業の価値を更に向上させたいとも考えている。

 単に食料の生産や、国際競争や価格の「競争」に明け暮れると、大規模、画一的な生産体系、経営体系になっていってしまう。しかし、大黒さんが考えている理想の農業形態は家族経営の酪農であり、一頭の牛から一人が生きていく糧を生み出す形態なのだ。そして単に「食料」ではなく「食品」生産の場として考えたい。

 画一的なマスプロダクトな農業では、農業自体が脆弱化し疲弊する。多様で多機能な農業や農業形態があってこそ、「自然環境の中」での「生命の再生産」を行っていけるはずだ。

 だから、農業者同士がスクラムを組んで、多様な農業の価値を見いだす運動をしたい。

 時間はかかるかも知れない。でもそんな農業者のネットワークを組んでいきたい…と大黒さんは熱く語る。

 大黒さんは「事業」や「経営」を担ってはいるが、ご本人がやりたいのはそれではなく、まるで「牧場」も生き物であるがごとく、それに寄り添う人間のライフスタイルとしての「農業・酪農」のスタイルの確立のように思えてならない。


●「経営者」とは


 「経営者に求められるものはどんなことでしょう?」取材者の問いかけに、大黒さんは「そんなこと考えたこと無いですよ」「自分を『経営者』だと意識したことが無い」と苦笑いした。

 「経営責任を背負うことが経営者なのなら、私は失格かも知れない。明日どうなるかも、実は誰も判らないのだから」

 大黒さんは言う。酪農や農業のあり方を考えた。地域に根ざし、消費者に受け入れられ、牛も健康に育つ。そんなことを目指して、自分の出来ることを一所懸命やった。

 牛の世話をするなら自分より牧場長の方が上手いはずだ。チーズやソーセージを作るのも自分よりスタッフの方がはるかに卓越している。そんなスタッフや仲間が頑張っている中で、大黒さん自身が出来ることをやるようにしていたら、今の社長になっていたというのだ。

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