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【土門レポート2001農と食産業の“時々刻々”】
セーフガード発動を言う前に…
- 土門剛
- 第11回 2001年03月01日
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昨年12月19日、輸入急増が続くネギ、生しいたけ、畳表の3品に対し、農水省は一般セーフガード(SG=緊急輸入制限)の発動に向けて財務(大蔵)、経済産業(通産)両省と共同で調査を開始すると発表した。輸入増加と農家の被害の因果関係を調べるのが目的である。SG発動のための資料となる、SG発動に向けての政府調査は、鉱工業品も含めてこれが初めてだ。
SG発動へのスケジュールも公表された。12月22日に始まった政府調査は、連休直前の4月27日までに終え、5月の連休明けに最終決断を下す。その頃の政治情勢はとても微妙だ。6月24日に東京都議選の投票がある。自民党大敗は避けられない。その1ヶ月後には参院選が控えている。ここでも自民党の苦戦が伝えられる。野党はしきりにSG発動をはやす。SG発動のボタンは選挙対策に苦慮する与野党政治家が押すのだ。
今回、調査対象となったのは、すべて中国からの輸入急増で苦しむ産地の品目ばかりだ。国別シェアでは3品とも9割を超す。従ってSG発動は最悪の場合、中国との貿易戦争を覚悟することになる。徹底抗戦するか、条件闘争するか、あるいは完敗を喫するか。現時点では何とも予想できない。まさに賽は投げられたり、だ。
SGを発動すれば相手国は報復措置を講じることができる。その相手国は、もっとも効果的な報復手段を打ってくるだろう。小生が中国政府首脳なら、発動対象となった品目の主産地で中国向け輸出比率の高い工業製品を狙い撃ちする。かりに中国がそのような報復措置を講じてきた場合、わが農村は果たして耐えられるだろうか。
SG問題は農産物だけではない。ユニクロ旋風吹き荒れる繊維業界も、中国から衣料品の輸入急増に対し、一般セーフガード発動を政府に要望している。工業製品の輸出を優先することを至上命題に、農産物の輸入増加にはある程度目をつぶってきたわが国の貿易の基本構造が根底から崩れてくるような気がしてならない。その矛盾のすべては農村地帯に及んでいくことを覚悟せねばならぬ。
SG発動は日本農業、いや日本経済にとって、果たして「吉」と出るのか、あるいは「凶」と出るのか。農業者でなくとも冷静、客観的に考えてみるべきだ。
SG発動へのスケジュールも公表された。12月22日に始まった政府調査は、連休直前の4月27日までに終え、5月の連休明けに最終決断を下す。その頃の政治情勢はとても微妙だ。6月24日に東京都議選の投票がある。自民党大敗は避けられない。その1ヶ月後には参院選が控えている。ここでも自民党の苦戦が伝えられる。野党はしきりにSG発動をはやす。SG発動のボタンは選挙対策に苦慮する与野党政治家が押すのだ。
今回、調査対象となったのは、すべて中国からの輸入急増で苦しむ産地の品目ばかりだ。国別シェアでは3品とも9割を超す。従ってSG発動は最悪の場合、中国との貿易戦争を覚悟することになる。徹底抗戦するか、条件闘争するか、あるいは完敗を喫するか。現時点では何とも予想できない。まさに賽は投げられたり、だ。
SGを発動すれば相手国は報復措置を講じることができる。その相手国は、もっとも効果的な報復手段を打ってくるだろう。小生が中国政府首脳なら、発動対象となった品目の主産地で中国向け輸出比率の高い工業製品を狙い撃ちする。かりに中国がそのような報復措置を講じてきた場合、わが農村は果たして耐えられるだろうか。
SG問題は農産物だけではない。ユニクロ旋風吹き荒れる繊維業界も、中国から衣料品の輸入急増に対し、一般セーフガード発動を政府に要望している。工業製品の輸出を優先することを至上命題に、農産物の輸入増加にはある程度目をつぶってきたわが国の貿易の基本構造が根底から崩れてくるような気がしてならない。その矛盾のすべては農村地帯に及んでいくことを覚悟せねばならぬ。
SG発動は日本農業、いや日本経済にとって、果たして「吉」と出るのか、あるいは「凶」と出るのか。農業者でなくとも冷静、客観的に考えてみるべきだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門レポート 農と食産業の“時々刻々”
新しい歴史が始まる。夜明けを前に、すでに万全の身支度を済ませている者、覚悟の朝に今跳ね起きようとしている者、目を覚ましながらも名残惜し気に布団の温もりから脱することのできぬ者、そして、いまだ惰眠をむさぼり続ける者。改めるに遅いということは無い。さあ起きだそう。奮い立とう。 わが国の産業と農業そして日本人が、避けられぬ選択としてグローバルスタンダードを認めつつも、誇りある地位を保ち続けるために、土門剛氏に既に決せられた改革の方向性の中で、2001年に向けた“時々刻々”の展開をレポートしていただく。
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