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土門レポート2001農と食産業の“時々刻々”

セーフガード発動を言う前に…

昨年12月19日、輸入急増が続くネギ、生しいたけ、畳表の3品に対し、農水省は一般セーフガード(SG=緊急輸入制限)の発動に向けて財務(大蔵)、経済産業(通産)両省と共同で調査を開始すると発表した。
 昨年12月19日、輸入急増が続くネギ、生しいたけ、畳表の3品に対し、農水省は一般セーフガード(SG=緊急輸入制限)の発動に向けて財務(大蔵)、経済産業(通産)両省と共同で調査を開始すると発表した。輸入増加と農家の被害の因果関係を調べるのが目的である。SG発動のための資料となる、SG発動に向けての政府調査は、鉱工業品も含めてこれが初めてだ。

 SG発動へのスケジュールも公表された。12月22日に始まった政府調査は、連休直前の4月27日までに終え、5月の連休明けに最終決断を下す。その頃の政治情勢はとても微妙だ。6月24日に東京都議選の投票がある。自民党大敗は避けられない。その1ヶ月後には参院選が控えている。ここでも自民党の苦戦が伝えられる。野党はしきりにSG発動をはやす。SG発動のボタンは選挙対策に苦慮する与野党政治家が押すのだ。

 今回、調査対象となったのは、すべて中国からの輸入急増で苦しむ産地の品目ばかりだ。国別シェアでは3品とも9割を超す。従ってSG発動は最悪の場合、中国との貿易戦争を覚悟することになる。徹底抗戦するか、条件闘争するか、あるいは完敗を喫するか。現時点では何とも予想できない。まさに賽は投げられたり、だ。

 SGを発動すれば相手国は報復措置を講じることができる。その相手国は、もっとも効果的な報復手段を打ってくるだろう。小生が中国政府首脳なら、発動対象となった品目の主産地で中国向け輸出比率の高い工業製品を狙い撃ちする。かりに中国がそのような報復措置を講じてきた場合、わが農村は果たして耐えられるだろうか。

 SG問題は農産物だけではない。ユニクロ旋風吹き荒れる繊維業界も、中国から衣料品の輸入急増に対し、一般セーフガード発動を政府に要望している。工業製品の輸出を優先することを至上命題に、農産物の輸入増加にはある程度目をつぶってきたわが国の貿易の基本構造が根底から崩れてくるような気がしてならない。その矛盾のすべては農村地帯に及んでいくことを覚悟せねばならぬ。

 SG発動は日本農業、いや日本経済にとって、果たして「吉」と出るのか、あるいは「凶」と出るのか。農業者でなくとも冷静、客観的に考えてみるべきだ。

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