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土壌別経営診断うちの土ではどう作る?

千葉県富里町・高橋博さんの場合

無施肥栽培。それは、土壌肥科学の常識から考えてあり得ないことと片づけられてしまうかも知れない。しかし、深く考えていくと科学的な裏付けが考えられる。無施肥栽培を経営に取り込むということは、信念をもって圃場を変え、総てを整えるところまでやり続ける経営者でなければできない。無施肥・無農薬による自然農法を十数年にわたって続けている千葉県富里町・高橋博さんの場合
関 無施肥栽培を全耕地でされているとのことですが、品目としては。

高橋 販売用のものは少品目生産となっています。将来に残す種を作るために、自家用としてはいろいろなものを作っています。総計すると20品目ほどですか。土がちゃんとしなければ作物は育たないわけで、土の状態を見ると、今の段階では根物が合うようです。もう少し進んで土がしっかりしてくると、葉物や成り果物もできてくると思います。現在は、大根、ニンジン、サトイモ、サツマイモにしぼった経営となっています。

関 無施肥栽培を始められたのはいつ頃からですか。

高橋 耕地は全部で3haありますが、いきなり全部の耕地で始めたわけではなく、初めは5畝から始めました。11年間で全部の耕地にしました。最初の頃からですと22年になります。

関 自然の表層土の窒素含量を調べると、2~3%と言われています。つまり1cmの土1反分で約300kgあるわけです。もともと土の中には栄養分としては作物が利用しきれないほど入ってはいるのです。いわば、栄養が缶詰の状態になっているか、瓶詰めになっているか、お皿に乗っていてすぐ食べられる状態になっているかの違いです。化学分析では、瓶詰めになっているものがこれだけあり、すぐ食べられる状態にあるものがこれだけある、という具合に計測します。缶詰のものはそのままでは使えませんので成分には入らないとするわけです。例えば、火山灰土で山を切り開いたところでは、当然、リン酸成分などはゼロに近い状態で検出され、これは「できない土」と判定されます。しかし、何らかの助けをすることで、今までその土になかった性質が引き出されるということがあるかも知れません。

高橋 化学分析についてですが、試験場がうちに来るようになって4年目になります。うちの土と隣町の有機農業の土を持っていって土壌分析をしたことがありますが、うちの土には、播く前の土の状態では本当に肥料成分が入っていないのです。硝酸態窒素もない。ところが収穫物を調べてみると、他と変わらないものができている。これが分からないと試験場の人も首を傾けているのです。

 自然農法には基本的な考え方とか原理があるのですが、そこに照らし合わせるとなるほどというものが「想像」できるのです。その一つは、自然界を先生としなさいというのがある。自然界では、誰も肥料を与えているわけではないが、毎年ちゃんと育っている。農作物といえど植物ですから、育つであろう。ただ、作物となるともう少し高度な土とならないといけないということは分かる。すぐ脇の造成地を見ていても、最初はセイタカアワダチソウがものすごく出た。それが、土が変わっていって、アワダチソウがなくなっている。今はススキだとか下草の柔らかい植生になってきている。それだけ進化している。その進化は何によるのかというと、植物自身が落とした枝葉によって進化した。それは動物の糞尿でそうなったわけではない。そこにヒントがあるのです。私たちは土の物理的構造を変化させるために植物の根に助けてもらいます。品目としては、麦類とか、深根を刺すもの、夏場であれば豆類を育てて根によって土を変えてもらう。全部の土にそれをやるのではなく、あくまで物理的な構造を変えるためにポイントポイントでやるのです。作物の中ではそれほど肥料分を必要としない大根でも育たない土がありますから、それを変えるためにそういう処置をします。構造上の目に見える形としては、団粒構造の整然と並んだ土になります。そういう畑になると、力が出てきて、播くだけで育ってくる。それと、土壌サンプルを植え付け前、生育途中、収穫後と調べるのですが、生育途中だと若干成分が増えているのです。

関 これは仮定なのですが、大気中には80%の窒素があります。固体の部分(土壌)に根があり、雨が降ると液体の部分で気体に接しているわけです。大気中に8割もあるものを、微生物が利用していないはずはないと思うのです。こういった環境に何億年も生物はいるわけです。言葉で言えば窒素固定菌となってしまうのですが、それについて学者たちがちゃんと勉強しているかと言うとまだまだだと思うのです。窒素だけでなく、日本では少ないと言われているリン酸分やカリウムについても岩石の中にはもともと含まれているものです。それを最も必要な時に必要な量引き出してくる自然のメカニズムというのが恐らくあるのだろうと私は思います。これが証明されるにはまだまだ時間がかかるのだろうと思いますが、いろいろな経験則から考えても、そういったメカニズムがあるのだろうと考えます。

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