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土壌別経営診断うちの土ではどう作る?

千葉県富里町・高橋博さんの場合

圃場・改善のポイント/土のしくみ・はたらきを知る
栄養成分を補うには肥料しかないのか


 海の水がなぜ塩辛いかというと、陸地の山や河などあらゆる部分の岩や土壌、有機物から溶け出した様々な無機成分が水の流れに乗って海に溶け込み、そこで蒸発した水蒸気が雲となり、雨を降らせ、再びミネラルを溶かし、また海に運ばれという繰り返しによって濃縮されていくからです。

 また私たちが使う肥料も、その多くが岩石が風化して溶け出し、ある場所に集積したものを採取して利用しています。

 このような土壌やその土壌に含まれる未風化物(この未風化物は造岩鉱物としてみなされるわけですが)の無機化、つまり分解促進が進めば、作物栽培に必要な成分は外部から持ち込むことをしなくても賄えることになります。

 これは土壌肥料学の教えに従えば、天然供給量ということで、施肥設計をする上ではかなり大事に考えていかなければならないことです。

 ところが実際に私たちの現場でする施肥設計では、天然供給量のことなどまるで頭に入っていないどころか、跡地の残存肥料についての調べやその対応などでも勘に頼った施肥が行われているのが現状です。

 作物側からすれば、その溶出されるタイミングやあらゆる成分バランスがとれていることは大事なことです。

 また、天然供給量を大きく引き出す努力をすることは、土壌の物理的性質や生物性を豊かにすることであり、土との長きに亘る共生を成り立たせるものです。また、それはできた農作物が人間の栄養バランスを最良に保つことであり、農業が発生する公害を防ぐことにもなるわけです。

 とはいえ、理論と現実の経営を一致させることは難しく、これに挑戦する人も少ないのです。

 今回登場する高橋さんは、野菜作を慣行的なやり方で10年ほど続け、その中で感じたこと―農業は人類が存在する限り必要な産業であるにもかかわらず、現在の日本での一般的なやり方では永続性は大変薄い―から、何とか永続性につながる方法はないかと模索したそうです。

 そして、近くに長年無施肥・無農薬栽培を続けている(有)ナチュラルシードネットワークの石井吉彦さん(一月号農業経営者ルポ参照)のお母さんがいることを知り、何回も足を運び、その方法を実行してみようと決意して、最初は5aの畑から始めたということです。

 この無施肥栽培の経過は大変に重要で、施肥法や土壌改良の基礎が把握できるはずです。

 まず、当初の三年位は前作の跡地の残存肥料分に助けられて問題はあまりなく推移するそうです。


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