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儀礼的贈答に敬意を払った中世人の論理とは
お中元や歳暮等の儀礼的贈答が減少した昨今だが、日本は先進諸国のなかでは例外的に贈答儀礼が残り新しく作られているという。中世後期は贈与が日本史上もっとも異様な発達をみせた時代で、年貢の代銭納を機に発達した流通市場から特産品を贈答として調達し、贈答品はリサイクルやオークションで市場経済へ還流するなど、贈答経済と市場経済が密接な関係にあった。さらには荘園からの収入が覚束なくなり貴族が困窮するようになると贈答の金額を記した折紙(目録)だけがやりとりされ、贈答の相殺や譲渡さえあったという。
そうまでしてなぜ贈答するのかについて、本書では「相当の儀」に対する中世人の強いこだわりに言及している。そこでは、贈与の品目・数量、書状の体裁、返礼までの日数等において自分と相手の身分差を加味したうえで釣り合いがとれているかが重視されており、個人的な関係づくりというよりは社会全体の秩序を成り立たせる功利的な性質があったという。最近のサービスや情報の交換さらには公共の概念にも通じる面白い論理だと思う。(松田恭子)
贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ (中公新書)
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桜井 英治
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