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読み切り

手数料自由化見送りで卸売り市場はどう変わる

漫画チックな展開


 政治の影響はともかく、手数料自由化への卸売業界の対応ぶりは、もはや末期的症状におかれた業界の現状を如実に反映していると言わざるをえない。これから本格論議という段階になって、業界団体が論議をやりたくないと居直ってきたようなものである。

 「卸売手数料等の問題は中長期課題であった。唐突に何の準備もないままに提起されたことに奇異を感ずる」

 7月7日の第2回ヒヤリングで全国青果卸売協同組合連合会が述べた意見である。

 農水省が手数料自由化を提案してきたのは、4月18日に開かれた同部会。政府が進める一連の規制緩和措置として、卸売業界も手数料自由化に踏み切るべし、と問題を投げかけてきたのである。

 その手数料は法定の固定制。卸売市場法を受けた中央卸売市場条例で、都道府県ごとに決められ、東京都の場合は野菜8.5%、果実7%、花き9.5%、肉類3.5%、水産物5.5%だ。

 手数料自由化は、市場開設者が定めるが、全国一律で売り手と買い手には不満のタネであった。手数料自由化は、その全国一律をやめて、卸売業者が取引相手と相対で料率や額を決められるようにするものである。

 「市場外・市場間の競争が激化する中で、卸売業者が競争力を強化し、卸売市場の活性化を図るためには、卸売経営の収益の大部分を占める手数料について競争を導入することが不可欠」

 問題提起をした農水省の言い分にはもっともな部分が多い。その背景には一連の規制緩和の流れがあった。昨年10月には株売買に伴う委託手数料が完全自由化に移行し、金融機関の預金金利自由化は94年に完全実施され、商品取引も2004年末に完全自由化の予定、タクシー運賃の完全自由化も実施されたばかりである。

 手数料自由化のメリットは計りしれない。手数料に競争原理が働けば、手数料が単に下がって生産者がメリットを受けることだけではない。競争が進む中で卸売業者に販売努力の機運が拡がれば、流通業界全体にカツを入れることもできるのだ。

 業界の対応ぶりは情けないの一語に尽きる。そんな業界の意向を代弁するかのように全国中央卸売市場花き仲卸業者協会は先のヒヤリングでこう述べた。

 「現在の料率は決して高いものではなく、これを下回ったら地方の卸売業者は総崩れになるのではないか、そうなると仲卸、小売もやっていけなくなってしまうと懸念される」

 ヒヤリングでの業界の陳述内容を読む限り、卸売業界が農業生産者のため、手数料を下げてやろうという真摯な態度が微塵も感じられなかった。誠に残念なことである。

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