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手数料自由化見送りで卸売り市場はどう変わる

 人件費のウェートが高いことも収益の圧迫要因だ。加えて集荷対策や産地対策に要する経費もバカにならない。産地対策には生産者とのコミュニケーションを図る出張旅費も含まれているようだ。

 農水省が2つの奨励金について即刻廃止の方針を打ち出してきた事情は先の資料に、

 「卸売手数料と関連を有する出荷奨励金については、出荷の奨励(出荷の計画化、規格の改善等)という初期の目的がほぼ達成してきている中で、これを廃止し、出荷者が提供を受ける様々なサービスとその対価たる卸売手数料の組み合わせの中で、当事者の自由な判断に委ねることが適当。

 更に、卸売手数料と関連を有する完納奨励金については、これを廃止し、販売代金回収コストとの関連において、当事者の自由な判断に委ねることが適当」

 と説明されている。

 完納奨励金の廃止に業界はとくに苛立った。

 「完納奨励金は、卸売業者が3、4日で代金を回収し、販売から1週間以内に生産者に代金を支払えるのも代払い制度があるからであり、その運営を支えている完納奨励金は必要である。完納奨励金は単なる代金の完納に対する謝礼ではなく、支払いの保証、集金業務にかかる対価である。これがなくなれば、卸売業者は自ら代金回収を行わなければならず、これは並大抵なことではないはずである」


市場原理で進む淘汰選別


 その卸売業界も構造変化が起き、事実上の手数料自由化が進行している。生産者が、手数料が法定固定の委託販売から、当事者間で手数料が決まる買い付け販売に切り替える動きが強まっているのだ。

 市場関係者によれば、「すでに3分の1強が買い付け。今後も増える見通しですね。中には『買い付けでなければ出荷しない』と強気の産地も出てきていますよ」

 スーパーや商社などは産地から直接仕入れる市場外流通にシフトしている。卸売市場がスーパーや商社に対抗して荷を引くためには、それこそ手数料を下げざるを得ないのである。

 その買い付けは、生産者から青果物を買い取って、自ら仲卸などに販売する取り引き形態。売買差益が、委託で言う手数料に相当するが、市場関係者によれば、「概ね3%台。販売力のある卸売業者の場合は4%から5%程度利益を出しています」という。

 手数料自由化が先送りされても、市場では自由化を先取りするような動きが一段と強まり、その結果、卸売会社間の経営格差がいま以上に拡大、市場原理で淘汰選別が進むことは確実である。

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