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特集

「過剰施肥」脱却のススメ

腐植の役割

 窒素過剰により、硝酸が土壌に蓄積すると土壌pHが下がる。pHが下がると土壌水分中のプラスマイナスにバランスをとるため、カルシウムなどの塩類が土壌中から溶け出してきて土壌の塩類濃度(EC)が上昇する。これが植物のカルシウム欠乏やホウ素欠乏と関係していて、それらの欠乏は土壌中に欠乏しているからではなく、硝酸過剰によるものではないかと、関祐二氏は指摘する。つまり、葉面散布でカルシウムやホウ素を供給するというのは、一時的な解決にはなるが、根本的な問題の解決ではないということだ。

 実は土壌中の腐植の存在は、この点からも重要な役割を担っている。腐植物質は圧倒的にマイナス電荷を多く持つため、塩類を抱きかかえることができ、pHが一気に下がるのを防ぐことができる。植物が腐熟し堆肥化されていく過程では、まず最初に低分子のアミノ酸や糖類が分解される。この過程でピシウムという菌が増殖し、作物にとって有害な物質を生産する。堆肥場を圃場から遠ざけているのも、経験的にそういったことが知られていたからであろう。堆肥は、低分子化合物が分解されつくされ、このピシウム菌が増殖しなくなったところで圃場に投入されるのが一般的である。土壌中では、次に高分子化合物であり、微生物にとっては難分解性のヘミセルロース、セルロース、リグニンといった物質が時間をかけて分解されていく。微生物にとっては最も難分解性のリグニンがマイナス電荷を多く持ち、土壌pHの安定化に貢献している。


作物生産に寄与するのは飢餓状態の微生物

 「皆さん信用してくれないんだけれど、微生物が活発に増殖をしていたら、それは植物にとってとんでもない敵になるのです。菌が右肩上がりで増殖しているような土は、作物生産にとって不適なのです」と西尾教授は強調する。

 菌にとって非常に食べやすい低分子の糖類と硫安などを土壌に入れてやると、菌は一時的に非常な勢いで増殖する。そこで繁殖する菌は一時的に粘質の糖類を分泌し土壌の団粒化も見られる。しかし、それらの糖類が分解しつくされると、その粘質の糖類も食されて菌はぱっと死んでしまい、土壌もすぐにボロボロになってしまう。「食べるものが無くなって菌数が減り、安定したところの菌数が高いところの土壌が作物生産によいのです」と西尾教授。ヘミセルロース、セルロース、リグニンといった難分解性のものがゆっくりと分解されることで、安定した菌数が保たれる。その安定期の菌を飢餓状態の菌と呼ぶ。それは増殖をせず、維持代謝を行っている。作物生産から見ると、この維持代謝を行っている菌が土壌中にたくさんいることがよいことなのだ。維持代謝には多くのエネルギーが必要とされない。植物から養分を横取りすることが少ない。更に、菌が維持代謝を行っていれば、それほど窒素成分を必要としない。土壌中の有機質成分を少しずつ分解しながらも、自らは余り窒素成分を使用しないので、土中には無機態窒素がすこしずつ土中に放出され植物はそれを利用できる。また、そういった状態にあれば、外から有機物を放り込めば、菌は即座に増殖し、有機物を分解して作物生産に寄与してくれる。飢餓状態だからこそ、いつでもスタンバイの状態にあるのである。また、腐植によってできた団粒構造は難分解性であるから長持ちし、土壌の物理性に貢献する。

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