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農業経営者ルポ「この人この経営」

「ウマイ青汁なんてどうですか?」

 サラリーマン時代、近隣の鶏卵会社に就職していた。勤めをしながら家族で水稲を作り、生産したコメは当初は近隣の農家と同様に農協に出荷し、普通に減反・転作にも参加していた。

 しかし、知り合いからコメを売って欲しいと声を掛けられたのを契機に、特別栽培米として自分で精米し、近隣に配達していた。

 搗きたての、生産者の顔が見えるコメは飛ぶように売れ、自作地だけでは足りなくなり、近隣農家から水田を借地して、気が付いたら7haの稲作兼業農家となっていた。

 「うちのお米は2週間で食べ切って欲しいんです」と2キロ、3キロ、5キロ、10キロと小刻みに袋詰めにし、注文を受ければ毎週でも配達に行くという接客態度は今でも続いている。販売単価も、数量にかかわらず、均一して500円/キロ(税・運賃込み)である。

 今では、自宅に小型の精米プラントと、定温倉庫を施設し、「いつでも好きなだけ、美味しいお米を食べてもらいたい」と全量を自分で売りさばいている。

 サラリーマンとの兼業に見切りを付け、コメ一本で専業農家を目指したのも、お米を毎回注文してくれるお客さんが大勢いたことが大きな後押しとなった。

 食べる人の近くで、美味しいものを作り喜んでもらう喜びは、その安全性についても感心を深めていった。食べる人よりも農薬に多く接する生産者の方が敏感になるのは当然だ。

 できれば、無農薬で生産できないか?そのためには健全な土づくりからしなければならない。

 無農薬・有機栽培に真剣に取り組みコメの経営に邁進していた。

 水稲の栽培面積を増やすために借地をする。借地をすれば転作も必ず付随してくる。地域としては転作作物に大豆を推奨しており、共同で作業組合を作って転作を消化しているが、伊藤さんは、大豆ではなく、ケールを栽培して、三年目になる。

 ケールとは「まずい!でも、もう一杯!」のCMでお馴染みの「青汁」の原料である。

 キャベツやブロッコリーの原種だと言われ、健康飲料として注目を浴びている。

 伊藤さんは、ケールは全量を青汁メーカーのキューサイに契約栽培して出荷している。青汁はケールをそのまま搾って呑むものであるため、残留農薬には特に神経をとがらせており、「無農薬・無化学肥料」「有機栽培」を条件にしているという。紋白蝶が飛び回っているケール畑を見て納得をする。

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