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農業経営者ルポ「この人この経営」

「ウマイ青汁なんてどうですか?」

 ケール栽培の先進地では、畑で連作しているためか、病害虫が出やすいと言う。また、ついつい収量を多く採りたくなり、悪いのを知りつつも農薬や化成肥料を散布してしまう生産者があったらしい。

 伊藤さんのケールは、水稲との輪作が功を奏したのか、病害も比較的少なく、硝酸態窒素も上がらないで生産ができている。

 肥料バランスが崩れると、病気にかかりやすくなってくる。結果的に量も穫れなくなるし、まずいケールになってしまう。

 ちゃんとして栽培すれば、青汁だって美味しくなるのだという。そうすれば『まずい』ケールより一段高いグレードで買い取ってもらうことも不可能ではない。

 青汁のラインの関係もあって、現在は、『まずい』ものと混ぜられてしまう。ラインの数量を聞いてみたら、100ha規模の栽培があれば別ブランドで『まずくない』青汁も確立するだろうとのことだ。

 100haというと、伊藤さん一人ではとても作りきれない。そこで一緒に、しかも、ちゃんとした肥培管理・無農薬でケールを栽培しないか?と声をかけている。「そうすれば減反も何も怖いものはないですよ」と笑う伊藤さん。

 お話を伺いながら、ケール畑を見て回る。牛舎には肥育牛が足を伸ばして反芻をしている。機械庫には稲刈りが終わって、きれいに整備・洗浄されている大型コンバイン等が整然と格納されており、油染み一つない床だった。

 「今日は町内のマラソンだったんですよ」とケール畑の前で運動服姿を気にしながら撮影を受けている。伊藤さんと接していると、穏やかだけど的確な言葉が返ってきて、落ち着いた心持ちでお話することが出来る。

 「9人目の孫なんです」と子守をしながら奥様も笑顔で会話に混ざってくる。

 専業プロ農家が往々にして漂わすピリピリとした緊張感や、悲壮感を一切感じさせない雰囲気は何なのか。

 既存の習慣にとらわれず、しかし奇をてらうことなく、家族一緒になって、楽しく経営を行っていけるのは、伊藤さんご自身の人柄に寄るに他ならない。

 何者にも束縛されない精神の自由さを兼ね備え、それをしなやかに具現化していく。しかし、流行ものだからといって押し流されない確固としたそんな伊藤さんなりの「スタイル」を持っているからだと考える。
(牧瀬和彦)


伊藤ビッグファーム 代表取締役日伊藤隆男さん(49歳)
〒838-0214
福岡県朝倉郡夜須町大字東小田753-1
TEL:0946-42-2241
FAX:0946-42-1807

【プロフィール】
 1951年3月26日生まれ。卒業後、地元の鶏卵会社に就職。サラリーマンでありながら、家業の水稲で兼業農家。34歳の頃から作付け面積約7haの自作の米を販売。

 43歳の時、会社を退社。専業農家となる。46歳の頃、キューサイと出逢い、ケール契約栽培を開始。水稲との転作ローテーションで現在12ha。伊藤ビッグファーム代表取締役。

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