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特集

ケーススタディー だから彼らは選ばれる
小さな市場の多様な取り組みと可能性

ケース4 大型量販店への小口直売
「信頼できる人が作った作物を自信を持って売りたい」
東京のコンセプト・フードマーケット「タベルト」が惚れ込んだ
リンゴ生産者・青森県藤崎町 竹嶋亮一さん


 代官山といえば、つい最近まで日本で先駆け的な集合住宅、同潤会アパートを見ることが出来たが、今は再開発によって超高層の住宅が建っており、近代的な様相に生まれ変わっている。この再開発されたブロックの一角に、地域住民のための新しいショッピングエリアが生まれフードマーケットのタベルトもこの中に作られた。このタベルトはこれまで数多くの大型量販店づくりを手掛けたショッププランナーでプロデューサーの石川楨三氏がその仕事の集大成として取り組んだフードマーケットだ。タベルトで売られる青果類は他のスーパーやショッピングセンターと少し違っている。それは店を作った石川氏のポリシーというか、基本的な商品への考え方から来る違いだ。


【☆嘘のない正直な商売をしたいからどこにでも出向き生産者と対話する☆】

 石川氏はこう語ってくれる。

「ここは僕が作ってきたフードショップのいわば集大成なんですよ。だから自分が納得できる商品を売りたかった。正直で嘘のない商売が目標なんです。まず主食材の和牛ですがこれに関してはどこの店も真似できない質と価格が実現できました。魚にしてもその鮮度と価格について努力してきました。ただし肉や魚がどんなに良くて安くても、実際に食卓に乗る時はこれだけでは食べられません。

 やはり野菜や果物が必要なんですよ。だからどういう野菜や果物を組み合わせて買ってもらうか、これを考えたわけです。タベルト自体、まだオープンして日が浅いので生鮮品も十分な品揃えとはいきませんが、青果を入れる時にも和牛に注いだような基本姿勢は貫きたいですからね」

 タベルトの商圏は、この代官山の周囲直径1キロ圏内の住宅で戸数にして7500戸である。また地元にある数多くのブティックで働く若者達も客となる。ただし定住者は1世帯当たり1人ないし2人の家族構成という極めて特殊な商圏である。

 一見すると昼間人口も多く年齢層も幅広く感じられるが、これはいわばファッションタウンとしての代官山を訪れる観光客的な買い物客で、生鮮三品の購入には結びつかない。そのためタベルトでは商品の陳列方法や販売促進方法、さらにはパッケージづくりでも気を配ってきた。当然、調理済みの惣菜コーナーも充実させつつある。果実売り場でも1個売りからパックで4、5個売りする形まで様々だ。

 中でも果物は厳選されたものを集めているが、ここに紹介する青森県弘前市郊外の南津軽郡藤崎町の竹嶋亮さんが作る林檎もそのひとつである。

 石川氏はこう語る。

「産地でじかに農地を見てそこの土づくりや作物づくりを見ること、それと生産者に会って話すことを心掛けてきました。まずその生産者が信頼できる人であることですね。信頼できる人が作った作物を自信を持って売りたいですからね」

 石川氏と竹嶋有機農園の竹嶋さんが知り合うきっかけとなったのも、石川氏が仕入れている国産大豆だけで作る武田納豆の女社長、武田博さんを通じてだ。石川氏ははじめて竹嶋有機農園に出向いて林檎を食べた時の驚きを語ってくれた。

「いい香りがしました。林檎の甘いすばらしい香りです。農薬を使わないというので皮ごと食べてみましたが、これまで食べた林檎と全然違うんですよ。本当に驚きました。津軽は1個だと普通は食べきれないんですが、あっという間に食べましたね」

 石川氏はこの林檎をタベルトで売りたいと考え、竹嶋さんを説得した。

「これまで量販店には出さなかっただども、少し前は大阪の河内生協とか泉生協に出したこともあったども、そのあとでな大阪の生協が合併して大きくなったんでもう出せんわけだわさ。その後も熱海にある宗教関係のとこからもきたども、全国に支部があってこれも大きすぎて出せんわけだ」(竹嶋さん)

 特に青果は美味しいことが大切だ。今市場に出回っている果実は見栄えはきれいでも甘味や香りのないものが多い。竹嶋さんの林檎は袋がけしないので表面の見てくれは決して良くない。しかし、味や香りがまったく違うのである。

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