ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

ケーススタディー だから彼らは選ばれる
小さな市場の多様な取り組みと可能性

【☆お客さんへの責任を意識する☆】

 毎年、前年比で売上げ伸び率が高かった上位3名を表彰する制度もそのひとつだ。昨年の優勝者は柏原康夫さん(64)。それまでの花き栽培から、もち菓子の製造販売に切り替え、夫婦手作りのもち菓子が売場の人気商品に躍り出た。

 搬入は午前と午後に分けて1日3回。その都度作った出来たてを、すぐ売場に並べる。「少量でも欠かさず届けてます。せっかくおいしいと言ってもらっても、物がなければお客さんは来ないですから。商品を切らさないことが商売の基本だと思うんですよ」(柏原さん)。明日は何が売れるか、毎日夫婦でミーティングをする。この2年間休んだことは一度もない。

 センターでは、出荷量の制限がないことも特徴だ。搬入の時間も自由。「朝に決めてしまうと、夕方に売場がカラになってしまい、せっかく来たお客さんに申し訳ない」(堀切組合長)という配慮だ。

 やる気のある生産者は、日に何度でも足を運ぶ。中田忠一さん(56)もその一人で、出荷点数は組合で一番、月の出荷額が20万円を超える時もある。

 南部杜氏でもある中田さんは、「プロの百姓として、形は悪くても究極の良い農産物を作ることが理想」だ。生産者は孤独になりがちだが、センターに来て、「お客さんや他の生産者と話をすることが何よりも楽しい。馴染みのお客さんと農業談義になることもあるよ」という。

 センターの人気商品、手作りパン「自遊農園」の阪倉さんも、「センターに卸すようになって励みになった」という。阪倉さんは、「安全でおいしい食材を自分たちの手で作りたい」と脱サラしたご主人とともに田舎暮らしを始め、独学でパンを焼いている。自家製南部小麦100%のパンは、数量限定の人気商品だ。「いつも買ってる。今日は人に頼まれたから」と、まとめ買いをする女性客など固定ファンは多い。

 また、センターの事務を務めながら、女手ひとつで農業を営む松坂さんも、昨年のランキングで伸び率2位に表彰された成長株だ。「農協に出すほどの量はないけれど、ここなら販売できるので」と、営農の面白さに目覚めた松坂さんは、カタログを見ては作りたい作物に次々と挑戦している。「センターでは女性がとくに生き生きしている。おじいちゃん、おばあちゃんも元気になった」(堀切組合長)。

 安いと評判の価格は、スーパーや他の直売所を市場調査しながら、各生産者が作物の出来や量を考慮しながら付ける。「生産者は高いと言われることを嫌う。安くても消費者に喜んでもらいたい」(堀切組合長)。

 農協出荷のころは値段のことなど考えたことがなかった生産者が、消費者を意識して、10円の上げ下げで悩んでいる。「価格を付けることの難しさを通じて、売ることは責任が跳ね返ってくるということを皆に実感してほしい」と堀切組合長はいう。 

 出荷制限がないことも、センターの商品が安くなる仕掛けだ。「好きなだけ出荷できるので、生産者にとってはアテになる売場。特産品のブドウや花きの最盛期には、それこそ店中がそれ一色になるんですよ」(堀切組合長)。

 消費者にとっては、旬や最需要期に商品の種類や量が豊富で、しかも組合員同士の価格競争から値段が下がるので、「買い物するならふる里センター」と評判を呼び、遠方からもお客が集まってくる。

 その一方、こうした最盛期を外し、高く販売できる品種を開発しようと研究熱心になる生産者も出てくる。組合では、5人以上の研究グループには研修費(交通費1回5万円など)を支給、苗木の購入も半額補助する助成制度を設けている。地区で偏りがちな品揃えを増やす効果を上げ、消費者から「種類が豊富」と言われるゆえんだ。

関連記事

powered by weblio