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一流の考え方と歴史に触れる
「美食帖」というタイトルだが、前半はホテルオークラの建築について少なからずページを割いている。それは、このホテルの考え方“西洋の模倣ではない、日本の美”の説明に不可欠だからであるし、また、料理という官能に訴える商品が食物だけで成り立つものではないという事実の証左でもある。
著者が師と仰ぐ初代総料理長、日本のフランス料理界の巨人である故小野正吉氏のエピソードが興味深い。氏は、同ホテル開業の前年に欧米視察旅行を敢行し、「アメリカの近代的な管理システムとヨーロッパの伝統と料理に対する情熱を一度に体験」した。この、“和魂洋才”ならぬ“欧魂米才”は、このホテルが重視した指針であった。ところが、そうして勉強してきた氏も、日本の狭い社会にありがちな縄張り意識という障害のために、開業当初にはずいぶん苦労したことも書かれている。農業界で同様のことを体験している読者も多いことだろう。
もちろん、料理や仕入れの考え方もたっぷり書かれている。一流の秘密に触れることは、底の浅いバイヤーを見破るのにも役立つだろう。(齋藤訓之)
ホテルオークラ 総料理長の美食帖 (新潮新書)
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