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読み切り

オリジン弁当を国民のための基準食に/オリジン東秀株式会社会長安沢英雄さん

いま、「中食」といわれる持ち帰りの惣菜、弁当ビジネスが元気だ。外食より安上がりで、家庭の主婦も抵抗なく利用するようになり、マーケットは成長市場といわれている。「家庭の台所に代わって、家族の健康を考えたメニューを提供する」 ――平成6年、持ち帰り弁当専門店としてオープンした「オリジン弁当」は、それまでの量や品数を売る弁当店とはー線を画していた。防腐剤など添加物は一切使用せず、原料の成分分析にまでこだわり、客の健康を第一に考えたメニューを提供した。消費者の健康志向の波は、今後は中食というもっとも家庭の食事に近いところに及んでくる。その時流を読んだオリジン弁当は、その後急成長し、平成9年には株式公開も果たした。もとは中華チェーンだった同社が、弁当専門店に転換するきっかけは何だったのか。そこには「お客の視点」に立ち、自らを信じて変革を起こした、創業者・安沢英雄会長の強い信念がある。加工食品を販売することも、生鮮品を生産することも、「食べる人のために」という視点を外さなければ、そこに必ず需要がある。原料の開発から手がける同社にとって、農業は原点であり、生産者は役割を分担するパートナーだ。安沢会長に同社の理念と農業との結びつきについて、本誌編集長・昆がインタビューした。(加藤 さちこ)
日本の土は疲弊している 失われた栄養分

昆吉則(「農業経営者」編集長)

 安沢会長は、オリジン弁当を「国民のための基準食」にしたいというコンセプトをお持ちになっていますが、その根底には、現代の食生活や食料問題に対しての強い危機感があるのだと感じております。まず、オリジン弁当の原点についてお話し下さい。

安沢英雄(オリジン東秀株式会社会長)  私は年10回以上海外に出かけていますが、必ず調理場付きのホテルに泊まり、その土地の野菜を買って食べています。そこで感じることは、野菜に香りやパワーがあるということ。日本のニンジンなどの根菜は、調理すると溶けて香りもなくなってしまいます。これは土の問題が大きいのだと思います。戦後、日本は大量生産・大量消費の時代に入って、小さい耕地に化学肥料を使い、連作を続けてきたので、土が疲弊している。もともと高温多湿で野菜の栄養分が少ないにもかかわらず、ますます野菜の香りや力がなくなっています。米国や中国、オーストラリアでは連作はせず、休耕させて地力を養っています。また、自然のままの土の能力や機能をそのまま生かすことを、国民や生産者白身が要望しているのです。

 いま弊社では、国内の農家とともに身体に良い、本来の機能も持った野菜の生産に取り組みはじめていますが、日本の土の問題は、回復するまで少なくとも7、8年はかかるでしょう。それまでは契約栽培のできる海外に行き、間に合わせざるを得ないという考えです。

 また、戦後55年たって、当時の本物のうまさが忘れられようとしています。新しい風味や味を体験してしまうと、「これが本物のうまさだ」と主張し続けることは難しい。けれども40代以上のお客さんは、「他の店の味付けが濃いので、オリジンで食べて初めて素材のうまさが分かった」と言ってくれます。私も新潟の実家でうまい米を食べていたので、上京して初めて、自分の家の米がおいしかったことが分かりました。 20代の若者には味の違いは分からないでしょう。でも今のコンビニ弁当のような食生活はだめだということを、粘り強く主張して、コンビニのそばに店を出し続けているのです。

 米国は、生活習慣病や高齢者問題を深刻にとらえ、2000年までにヘルシーピープルという健康・栄養政策を推進してきました。しかし、残念ながら日本の政治家や官僚には、米国のような政策は期待できない。民間の我々が「国民の基準食」を作り上げていくしかないという使命感を持っています。

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