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BOOK REVIEW

空飛ぶ納豆菌 黄砂に乗る微生物たち

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空飛ぶ納豆菌 黄砂に乗る微生物たち (PHPサイエンス・ワールド新書)

著者:岩坂泰信
定価:882円(税込)
 出版社:PHP研究所


シルクロードからやってくる微生物


これから冬を越えて春になるとやってくるのが黄砂。「洗濯物が汚れる」「車に傷がつく」と不評でもあるが、シルクロードの彼方から砂が飛んでくるというのは、やはりロマンを感じさせる現象だ。しかし、これが単に砂だけを運ぶ現象ではなく、さまざまな微生物も運ぶものであることを、著者ら研究者が突き止めた。一層の大ロマンである。

もちろん、各種の鉱物や微量成分も、あの風に乗ってやって来る。だから、日本の圃場の土の働きにもいろいろな影響を及ぼしていると考えられるし、各種の醗酵技術や鳥/豚インフルエンザなどの感染症の研究を進める上でも、無視できない現象だ。

前半はやや硬い筆致だが、中盤以降は心なごませる逸話も記される。たとえば観測のために飛ばした気球を漂流させてしまう事故を起こした際に地域にもたらし得るトラブルを心配したこと、地元警察や海上保安庁との相談で温かく対応してもらったこと、この出来事から、むしろこの研究活動が地域(能登半島)に溶け込んだ感じになったことなど。研究者の熱意と人間らしさを感じさせる。(齋藤訓之)


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