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新・農業経営者ルポ

草取りは、上手くなっては駄目なんだ

さらに高松は、畑で水稲を作った経験も生かし、圃場基盤を作ることで、水田で現在のような大量の水を使わずに水稲を栽培する稲作技術を確立しようとしている。そうなれば、水田でも多様な作物を隣接しても作れるようになり経営的にも大きな効果を出せるはずだと考えている。高松は老いてなおイノベーションに取り組むのである。

こうした経営と農家の暮らしの革新に取り組んできた高松は、何を求めてそれに取り組んできたのであろうか。金が目的とは思えない。でも、普通作で必ずしも大規模というわけでもないが、その経営は結果として高い収益性を得ていた。子供を医学部に進学させ、慎ましくとも豊かな暮らしであることは、はた目にも見て取れた。そして、高松農場を継ぐことになった安部から賃借料も取らずに老後の暮らしを楽しんでいる。

「戻し続けること」という高松の農業経営の理念は、「利益は結果であり未来への手段である」という思想につながっている。そして、イノベーションを実現する経営者の多くもまた金よりも彼自身の強い自意識と現状革新に対する強い思いこそが思考と行動のベースになっているのだろう。彼らの多くは結果として経済的利益も得ることになるが、彼らにとっては金を得ること以上に自らの夢の実現こそがテーマなのであろう。(文中敬称略)

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