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新・農業経営者ルポ

イトミミズとイナゴに学んだ経営者

 最初の実験は、大発生したイナゴに行なった「虫除け」の呪術だった。実験翌日には、試験圃場のイナゴだけがミイラのような状態となり、杉山は驚愕した。杉山はその効果を認めつつも、その対処方法には違和感を覚え、実験は即刻中止した(オカルト農法第29~30回参照)。

 次に行なった実験は、収穫前のソバ畑に棲む生き物たちに向かって「祝詞(のりと)」を捧げるというものだった。その目的は、収穫作業の前に、その場所に棲む精霊や禽獣蟲魚に対して、収穫作業を行なう許諾を得ることと、コンバインで巻き込まないための避難勧告をすること、そして殺生してしまった生き物を「鎮魂」することである。そのエッセンスは、建物などを建てる前に行なう「地鎮祭」である。

 実際には「祝詞のりと」を捧げる行為は簡略化して、杉山が「言霊(コトタマ)」を使って直接生き物たちに話しかけるというものだった。

 この実験の効果も驚くべきものだった。杉山が話しかけた圃場には、生き物の死骸はほとんど見あたらなかったのである。杉山の避難勧告に従ったとしか考えられない結果だった(オカルト農法第33回参照)。

 「人間が愛をもって話しかける言葉や行為は生き物たちに通じることに驚き、感動しました。人間の意識や行動が変われば、生き物たちと共存共栄できるかもしれないという望みが沸いてきた出来事でした」

 この体験が、杉山の悩みを解消する大きなきっかけとなった。


イナゴに学び、生き物との共存策を実施

 それまでは邪魔者扱いしてきたイナゴに対しても、視点が変わると別の姿が見えてきた。杉山はまっさらな気持ちで「イナゴが存在する意味が何かあるに違いない!」とイナゴの姿を観察した。すると、イナゴはイネの穂よりも葉を食べること、葉をすべて食べ尽くすわけではないことに気づいた。そこでイナゴが食べ残した葉の面積を調べてみると、不思議なことが起こっていた。「LAI(葉面積指数)」が、理想的な数値を示していたのである。

 「LAI」とは、単位土地面積あたりの葉の面積のことである。この数値が大きければ、生成されるショ糖の生産量は多くなるので、ショ糖を蓄積する発育段階ならば指数が大きいことは歓迎すべきことではある。しかし、収穫間際には蓄積したショ糖を消耗してしまう。ところがイナゴが適度に葉を食べることによって、蓄積されたショ糖が消耗されなくて済んでいたのである。

 「イナゴは余分な葉を食べてくれているみたいなんですよ。イナゴたちは人間の邪魔をするどころか、私たちに協力してくれていたんですよ! ならば協力してもらえる体制を整えよう! そう思ったんです」

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