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新・農業経営者ルポ

イトミミズとイナゴに学んだ経営者

 杉山は水田をイネだけでなく、生き物たちも生息しやすくするために環境整備に着手した。杉山の信念が拡大した瞬間である。

 ビオトープは生き物たちの棲む場所として面積を拡大し、生き物たちが隠れる場所も設けた。また、排水路には水田につながる「魚道」を設定した。これによって水田の生き物の多様性は増し、水田そのものが生き物たちの巨大な棲み処と化した。

 水田に隣接した土手は草を刈り、生き物のエサとなるソバを播いた。そして「ここは生きとし生けるものたちのエサ場です。自由に食べてください」という趣旨の呪文とともに案山子を安置した。その効果はてきめんだった。ソバは見事に食べ尽くされたが、隣接する水田の稲穂に食害は見あたらなかったのである。


ベストスタイルは人力+機械力+自然力

 杉山は、生き物たちには必ず存在理由があるはずだという思いを強くした。大量発生するイトミミズの耕うん能力に気付いたのもそんな時だった。プラウ耕による深耕は30㎝ほどだが、イトミミズは餌を求めて100㎝ほども耕してくれるというのだ。実際、以前は農作業時に機械の邪魔になっていた15㎝大の石が、イトミミズが増えてからは土壌の下へ下へと沈んでいくことが実感できた。

 「イトミミズの働きは確かに素晴らしいと思います。でも、レーザーレベラーでせっかく均平化した圃場を、2年ほどで凸凹にしてしまうのも彼らの仕業。定期的な均平化作業は必須です。イトミミズが耕してくれるからプラウ耕やレーザーレベラーなんか必要ないはずだ、と言う人もいますが、私は自然の力を活かすということは、放任することとは違うと思います。農作物も含めて、生き物たちが生息しやすい環境を設定する、それが人間の役割だと考えています。そのためには生き物を犠牲にしないように、機械の能力を最大限に活用すればいいんです。今さら機械の効果を放棄することはないでしょう。人力、人知を尽くしてこそ、はじめて自然との協同作業が可能になるんです。だから私は人力+機械力+自然力を組み合わせるスタイルがベストだと確信しています」

 杉山の新たな取り組みの効果は、農作物の品質や経営にも顕著に表れてきた。有機栽培に転換した頃は5・5俵だった反収が、今では7俵と増えてきている。慣行栽培と比べれば少ないが、有機栽培としての価格を買い支えてくれる顧客がいる。食味の向上もあり、販売は順調に展開していて、2年先まで予約済みの状態だ。投入する肥料の量も最大で50%ほど減少するなど、資材コストをダウンさせる効果も出ている。

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