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【シリーズ TPP特集】
TPPの解き方(3)
【TPPと農協の再編】
キヤノングローバル戦略研究所・山下一仁研究主幹
- キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 山下一仁
- 2013年03月20日
TPPは「農業問題」ではなく「農協問題」という、キヤノングローグローバル戦略研究所・研究主幹の山下一仁氏。農協はなぜTPP参加に強く反対するのか。それは本当に農家のためなのか。そのカラクリを解き明かすことで、農業問題の本質も見えてくるという。国内有数の農政通である同氏に話を聞いた。(取材・まとめ・窪田新之助)
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理念と実態の大きな乖離
――TPPを巡って農業の構造改革の必要性を伺ってきました。ただ、そのことをJA農協はずっと止めてきましたよね。山下さんは「TPP問題は農協問題」と主張されていますが、構造改革を進めるためにも、JA農協をどう改革すればいいと思います?
僕は、JA農協が農業の協同組合でなくなれば解決すると考えている。つまり、単なる協同組合になるべきだと。JA農協には460万人の正組合員に対し、準組合員は500万人近くもいる。その地域の人であれば誰でも準組合員になれて、JA農協の施設を利用したり、融資を受けられたりする。
そもそも協同組合を作ったのは、たとえば資材を共同購入することで市場での競争力を高め、他の商人よりも組合員に安く売るためだったはず。しかし、実態はJAの利益になるように高く売っている。それで農業の協同組合というのがおかしい。
――組織の理念と実態が、まったく違っているわけですからね。
実際に今のJA農協というのは、共済とJAバンクで儲けている。それで農業関係事業の赤字を補填している。だから、JA農林中金や共済にしてみれば、むしろ農業部門は切った方がいいんじゃないかと思っているはず。ただ、農林中金としては、全国津々浦々にJA農協の本店や支店があることは大きな意味を感じているだろうね。それらがあるから、国内では三菱東京UFJに次いで第2位の預金額が集まるわけだから。TPPについても、JA全農なんかはむしろ海外に出たいんじゃないの。あそこは商社だからね。
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山下一仁 ヤマシタカズヒト
キヤノングローバル戦略研究所
研究主幹
東京大学卒業、同博士(農学)。1977年農林省入省。ミシガン大学大学院を経て、02年国際部参事官、OECD農業委員会副議長を最後に退官。経済産業研究所上席研究員を経て、09年8月にキヤノングローバル戦略研究所客員研究員。10年4月から現職。主な研究分野は、食料・農業政策、中山間地域問題、WTO農業交渉、貿易と環境、貿易と食品の安全性など。
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