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特集

経営者たちの農業改革 人からはじまる村おこし・町おこし

大泉 製造業は地方の時代とおっしゃられたけれど、農村の中に行った企業は東南アジアヘ移ってしまったんですよね。その辺で空洞化が起こったといったことはなかったのでしょうか。

中沢 70年代後半、製造業は地方展開の時代でした。その後、1ドル240円が140円の時代になり、海外進出が始まったわけです。たとえばカラーテレビの製造工場がいきなり日本から姿を消しました。しかし、代わりにパソコンの工場が建っているわけです。もちろん、これまでカラーテレビ工場があった所に、パソコンの工場が建つのではなくて、まったく新しい所に建っているのです。ですので日本全体をマクロ的に見れば、儲けの少ない古いものは押し出されていったけれど、新しく工場がどこかに建っているんです。しかし、カラーテレビ工場のあった地方にとっては、いきなり空洞化した感じがするわけです。それと昔みたいに人をラインに並べておいて、組み立てさせる労力は、もう東南アジアでないと集まらなくなってしまったのですね。ただ、それを支えている材料や部品などの素材を供給する中小企業もまた、今大企業より10年遅れで海外に移っているわけです。

昆 海外に目を向けるという点では、そのうち当誌に、韓国でミニトマトを作っている農業経営者を登場させたいと考えているのです。その記事を農業者自身に「他所の国に行って農業をする」というような、様々な発想を持ってもらえるきっかけにしたいと思ってるのです。

大泉 そもそも農業は、地縁社会でやっていた。それが職場社会に変わり、これからはネットワーク社会です。視野を拡げて互いに広い所で影響力を行使していけば、そこで培ったことが地域の中に活かせるのだと思います。

中沢 製造業で言いますと、中小企業サミットのようなものがあるのです。油分のノウハウを公開して討論するわけです。お互いライバルですが、隠れて開発しようなんてことは無理で、横の関連した企業同士が討論をしていかないと、業界自体が伸びないんです。農業でももっと、横の討論を拡げた方がいいですね。

昆 中沢先生のご著書「変わる商店街」を読ませていただいて、やはり人からすべてが始まると感じました。それに気がついた人たちが、異質な人たちとのネットワークを拡げていく。そのことが、実はなによりも自分を確立していける手段なんだと思います。自分が何者であるかという意識を、それぞれが持つことからすべてが始まる。そういう意味で、本日は「農業と商店街に共通する問題点と可能性」というお話しをしていただいたのですが、最終的には「一人ひとりの考えが大切だ」ということだと思います。本日はどうもありがとうございました。


変わる商店街
■中沢孝夫 著
■発売元:岩波書店/定価700円

郊外型大型店舗やコンビニエンスストアの登場などにより、都市中心部の商店街は衰退、空洞化の一途を辿っている。そんな中、新たな発想で「まちの賑わい」を取り戻すための多様な取り組みが、全国各地ではじまった…。本書は、地域と一体化したイベントや、「まちづくり会社」の設立、SOHOとの連携、インターネットの活用など、こうした試みの具体的な事例を取り上げながら、商店街再生への方向性を探ったものである。今回の座談会にご出席いただいた筆者の中沢孝夫氏は、商店街の衰退、空洞化の一因として、行政が大店法をはじめとする規制法や補助金政策などで手厚く面倒を見すぎたことを挙げている。商業者の多くが政治に頼ることに慣れ、自己責任を忘れてしまっているその姿は、農業にも重なってくる。上記の「まち」再生の取り組みに共通して言えるのは、まず最初に「まち」の人が走り、その後を行政が追いかけたという点であり、これもまた、農業者が自立した存在となるための参考となるだろう。

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