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時価会計基準で問題点は、農協の資産内容がそれに耐えられるかだ。とくに土地で持っている資産は心配である。かなり以前に取得した土地なら心配ないが、融資の際、担保にとった土地は問題。とくに自己競落で最近に取得したものは含み損を抱えているケースが考えられるからだ。時価会計基準で決算すれば、含み損が実損になってしまう。しかも農産物価格が下落している。デフレも続いている。そんな中での処理は少しきついように思えるが、放置することもできないのも現実である。
「信金や信組より態勢が整った」。農協金融へのビッグバン対応について旧知の経営局幹部はこう評価していた。客観的かつ冷静に分析比較すれば、信連や農協へのセーフティネットは信金や信組よりも厚くできているのはすぐ分かるはずだが、メディアの扱いは冷淡だった。日頃の不勉強がたたって内容が理解できないのだろうか。
農協改革に向けた一連の省令改正や法改正。80点に近い合格点だろう。あえて申せば立派な器はできたが、料理人の資質はどうか。農協経営者のことである。この間題は解決されたとは言えない。いまだ改革の中身を知らぬ農協経営者が大半を占めることは驚きである。
省令改正や法改正を点検してみて、よくもこんな法案が無事議会を通過したと思った。世の中がワイドショー政治に熱狂している最中、巧緻に長けた農水官僚が誰に気づかれずに、さっと「届け物」を置いてきたようなものである。
届け物の伝票に受領印をこっそりと押印した全中会長も評価してやらねばなるまい。が、舞台裏を聞くと取引がなかったわけではない。全中会長がこの厳しい法改正を受け入れたのは、野党から出ていた組合長の政治家との兼職の原則禁止を政府が見送る代償に応じたという解説も流れている。世の中が動くときは、これぐらいのことがあっても不思議ではない。ただ心配は、いまだ「届け物」の中身の恐ろしさを知らぬ農協組合長ら農協幹部だ。3年後の農協界が見物である。
【農協改革二法(改正農協法、農林中央金庫法)のポイント】
・法人経営に正組合員資格を付与
・JAの第一の事業に営農指導を明記
・経営管理委員会制度を改正
・一定の手続きの下でJAの地区重複を認可
・農林中金は自主ルールを策定し、JA、信連の信用事業を指導
・農林中金の指導による経営改善・組織統合に資金支援
(以上、施行は2002年1月1日)
・信用事業を行うJAは常勤役員3人以上
・常勤役員等の兼職・兼業規制を強化
・信連、統合連合会に経営管理委員会を必置
(以上、施行は2003年4月1日以降の最初の通常総会。ただし、信連への経営管理委員会設置は2004 年度から)
「信金や信組より態勢が整った」。農協金融へのビッグバン対応について旧知の経営局幹部はこう評価していた。客観的かつ冷静に分析比較すれば、信連や農協へのセーフティネットは信金や信組よりも厚くできているのはすぐ分かるはずだが、メディアの扱いは冷淡だった。日頃の不勉強がたたって内容が理解できないのだろうか。
中身を知らぬ農協組合長
農協改革に向けた一連の省令改正や法改正。80点に近い合格点だろう。あえて申せば立派な器はできたが、料理人の資質はどうか。農協経営者のことである。この間題は解決されたとは言えない。いまだ改革の中身を知らぬ農協経営者が大半を占めることは驚きである。
省令改正や法改正を点検してみて、よくもこんな法案が無事議会を通過したと思った。世の中がワイドショー政治に熱狂している最中、巧緻に長けた農水官僚が誰に気づかれずに、さっと「届け物」を置いてきたようなものである。
届け物の伝票に受領印をこっそりと押印した全中会長も評価してやらねばなるまい。が、舞台裏を聞くと取引がなかったわけではない。全中会長がこの厳しい法改正を受け入れたのは、野党から出ていた組合長の政治家との兼職の原則禁止を政府が見送る代償に応じたという解説も流れている。世の中が動くときは、これぐらいのことがあっても不思議ではない。ただ心配は、いまだ「届け物」の中身の恐ろしさを知らぬ農協組合長ら農協幹部だ。3年後の農協界が見物である。
【農協改革二法(改正農協法、農林中央金庫法)のポイント】
・法人経営に正組合員資格を付与
・JAの第一の事業に営農指導を明記
・経営管理委員会制度を改正
・一定の手続きの下でJAの地区重複を認可
・農林中金は自主ルールを策定し、JA、信連の信用事業を指導
・農林中金の指導による経営改善・組織統合に資金支援
(以上、施行は2002年1月1日)
・信用事業を行うJAは常勤役員3人以上
・常勤役員等の兼職・兼業規制を強化
・信連、統合連合会に経営管理委員会を必置
(以上、施行は2003年4月1日以降の最初の通常総会。ただし、信連への経営管理委員会設置は2004 年度から)
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
改正農協法で変わる農協経営
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