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【シリーズ TPP特集 】
TPPの解き方(4) 【TPPに勝つ方法 “農業壊滅論”にダマされるな! 農水省発表資料のまやかし】 農業ビジネス編集長 浅川芳裕
- 農業ジャーナリスト 浅川芳裕
- 2013年05月01日
「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加で農業壊滅」という意見は根強い。例えば、農水省の試算によれば、安い外国産が入ってきたら日本最大の農業地帯・北海道でも、小麦や、てん菜、デンプン用ジャガイモは壊滅し、酪農は大幅減少するというが、本当なのか。
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小麦農家の収入のうち、助成金は8割で商品代金は2割である。輸入小麦と競合して、仮に道産価格が半減しても、収入減は1割しかない。つまり、9割の収入が確保できるのに、全員が小麦栽培をストップするとは思えない。
しかも、小麦は北海道農家にとって畑作物の1つに過ぎず、農場全体からみれば収入減少率は数%だ。TPP対策費で助成金増加も見込まれており、農家の手取り収入は増える公算が大きい。
TPPは市場環境としても小麦農家に追い風である。関税撤廃で輸入小麦価格が下がる一方、政府が優先的に例外化交渉をするとみられるコメの関税が残ればどうなるか。小麦の食品素材としての優位性が高まり、消費はコメから小麦製品にシフトする。全体の需要が底上げされ、北海道産小麦のニーズも高まる。壊滅どころではない。
デンプン用ジャガイモは、さらに恵まれている。民主党政権時代から助成額を大幅に増やしたため、実需が伸びているコロッケやポテトチップ用のジャガイモ原料の品不足が続いている。関税と助成金を下げれば、海外産と品質差のないデンプン用から、消費と直結して売れる加工用ジャガイモの生産にシフトする。品質向上の努力をすれば農家収入も増え、税金投入も不要になる。
酪農はどうか。現在、国内競争力の高い北海道産生乳の他県への出荷が、制度的に制限されている。TPP以前に、国内の“関所”を解放すれば、売り上げが伸びる余地は高い。
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浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
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