記事閲覧
【シリーズ TPP特集 】
TPPの解き方(5) 【公平な仲裁の実現(下)】 京都大学大学院法学研究科 濵本正太郎教授
- 濵本正太郎
- 2013年05月01日
日米による事前協議の合意で日本のTPP交渉への参加が事実上決定した中、国内の調整に当たって最大の懸案事項となっている一つにISDS条項がある。いわゆる巷間で噂される「毒素条項」。国民の安全を守ってきた各種の規制が、外国企業の訴えによって緩和や撤廃させられる可能性があるというのだ。果たして実態はどうなのか? 国際的な投資の協定やその仲裁の事案に詳しい国際法の第一人者に話を聞いた。(取材・まとめ・窪田新之助)
シリーズTPP特集(毎週水曜日更新)はこちらから
自国のための条項内容は交渉次第
――なるほど。投資家が不利にならないよう、投資先の国ではないところでの紛争処理を実現するため、ISDSが出てきたんですということですか。
そうです。国と国とが条約を結び、その中で投資家に対して保護を与えるという約束をする。片方の国の投資家がもう片方の国で事業を展開する場合に、その投資家に対して差別をしてはいけないということで、細かいことを明記するわけです。ISDS条項もそこに含まれます。
――条項には、投資家の保護についてどんな内容が書かれているんですか?
非常に漠然としている条項もあります。たとえば「投資家に対して公正かつ衡平な待遇を与える」というものがある。あるいは収用、つまり財産を取り上げるということですが、国家がそれをする場合には、収用する土地と同じ価値の補償をするとかね。公正衡平待遇条項は非常に漠然とした条項ですが、要するに差別をしてはいけない、行政が恣意的な判断で一方的に害を与えてはいけないという趣旨のものです。
――自国の投資家のためにどういう条項にすればいいのか、それはあくまで交渉次第ということですね。
そうなりますね。
会員の方はここからログイン
濵本正太郎 ハマモトショウタロウ
1970年、福岡県糟屋郡古賀町(現・古賀市)生まれ。1988年、京都大学法学部入学。95年、同大学大学院法学研究科で修士(法学)取得。1998年から2000年まで同大大学院法学研究科助手、06年まで神戸大学大学院法学研究科助教授、09年から現職。この間、パリ第一大学招聘教授(国際投資法)、欧州評議会アンチ・ドーピング条約モニタリンググループ法律問題諮問委員会専門家委員のほか、国連国際商取引法委員会第二作業部会や経済開発協力機構 投資委員会などで日本政府代表を務める。
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)