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【シリーズ TPP特集 】
TPPの解き方(4) 【TPPに勝つ方法 国産牛肉、勝ち残りのカギは国際市場化】 農業ビジネス編集長 浅川芳裕
- 農業ジャーナリスト 浅川芳裕
- 2013年05月08日
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉で、自民党は「コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物」を念頭に、聖域確保を求める決議をしている。前回、これらの壊滅論のウソと生き残り方法を述べた。今回は、牛肉の勝ち残り策を記したい。
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「牛肉を聖域にする」というが、関税はすでに38・5%にすぎない。これは過去5年の為替変動(1ドル120円→同80円)の影響より少なく、50%の関税が撤廃されたのと同じである。にもかかわらず、国産肉用牛の頭数は同時期、約10万頭も増えている。
農水省は、TPP参加で「高級国産品を除く75%の国産牛肉が外国産に置き換わる」と試算するが、関税ゼロになっても4分の3が米国産やオージービーフに切り替わることはあり得ない。自由化されるほど牛肉需要が増え、増産につながった実績があるからだ。
1990年代に米国産牛肉が輸入自由化された後の10年で、国産牛肉は20万トン増産された。牛肉が日本人の食生活に定着したのだ。「輸入が増えれば国産が減る。輸入が止まれば国産が増える」という素人の常識は正しくない。肉牛農家に肝心なのは、牛肉食文化が発展することだ。
反対に、BSE問題で米国産牛肉の輸入がストップした後、国産牛肉の生産量は10万トン減少した。安くて、より安全とみなされた豚肉や鶏肉に消費がシフトしたのだ。日本経済が低迷を続け、国民所得が落ちれば関税率と関係なく、低価格な肉に消費は移る。
米国産、豪州産牛肉は敵ではない。牛肉市場ですみ分けて消費を増やせばいい。そして、TPPを活用して世界市場を開拓すべきときなのだ。
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浅川芳裕 アサカワヨシヒロ
農業ジャーナリスト
1974年山口県生まれ。1995年、エジプト・カイロ大学文学部東洋言語学科セム語専科中退。アラビア語通訳、Sony Gulf(ドバイ)、Sony Maroc(カサブランカ)勤務を経て、2000年、農業技術通信社に入社。元・SOGULマーケット専門官。元月刊『農業経営者』副編集長。現在ジャガイモ専門誌『ポテカル』編集長。2010年2月に講談社より発行された著書『日本は世界5位の農業大国-大嘘だらけの食料自給率-』がベストセラーになる。最新刊に『TPPで日本は世界1位の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代』(KKベストセラーズ)がある。
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