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シリーズ TPP特集

国際法の専門家が語る、ISDS条項の実態~(5)「仲裁事例(上)」 京都大学大学院法学研究科 濵本正太郎教授

  • 濵本正太郎
  • 2013年05月22日
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日米による事前協議の合意で日本のTPP交渉への参加が事実上決定した中、国内の調整に当たって最大の懸案事項となっている一つにISDS条項がある。いわゆる巷間で噂される「毒素条項」。国民の安全を守ってきた各種の規制が、外国企業の訴えによって緩和や撤廃させられる可能性があるというのだ。果たして実態はどうなのか? 国際的な投資の協定やその仲裁の事案に詳しい国際法の第一人者に話を聞いた。(取材・まとめ・窪田新之助)

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いつまで経っても公的資金が注入されない。

――その野村グループの話はどんな内容なんでしょうか?

野村グループにはオランダにサルカという孫会社があって、そこがチェコに投資をしたんです。

――さっき伺いましたが、一般に知られている限りでは、ISDS関連で直接、日本企業が関与した事例はないんですよね。あくまで野村グループの孫会社ということで、間接的な関与ということですか。

そうです。それで、当時のチェコは、ちょうど社会主義から資本主義への移行過程。そんな時に、サルカは国営銀行を民営化するプロセスにおいて参加したんですね。重要な地位にある旧国営の4銀行が不良債権を抱えていたんですが、サルカはそのうちの一つ、IPBに投資をしました。

――それで、どうなったんですか?

サルカが関与しなかった3つの銀行だけには、さっさと公的資金が入った。ところがサルカが関わっていた銀行だけには、いつまで経っても公的資金が注入されない。挙句の果てにIPBは中央銀行の公的管理の下に置かれ、その後で別の国営銀行に譲渡されるんです。だからサルカはチェコ政府を訴えました。そして勝訴した。賠償額がいくらだったかは、和解で決着したため公開されていません。ただ、相当な金額だったと一般には言われています。

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