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スーパー読者の経営力が選ぶあの商品この技術

品質で顧客の心をつかみ、おもしろおかしい農業を

 今日では10a当たり7~7俵半の収量を確保しているというが、それでも周囲の生産者からすれば少ない。追肥による理由のほか、やはり食味との兼ね合いから窒素肥料を抑えていることがその要因だが、荒川氏は窒素肥料を減らした分、購入した有機肥料を活用することでイネの生命力を引き出すだけの栽培管理に努めている。

 そんな荒川氏が作るミルキークイーンやコシヒカリの食味値は84~82。毎年安定してこれぐらいの数値を残しているという。客観的な数値は消費者への訴求効果も高いといえるが、「本来は食感」と成分表示の食味値を前面に押し出すことはしない。食味への追求を前提としたうえで、人と人とのつながりを大切にしながら販売するのが荒川氏のポリシーである。

 「お客様には、自分のところの味を知ってもらえたらいいなと思ってやっている。魚沼のようにはなれないが、気に入ってもらえるお客様を取り込んでいければそれでいい。売り込みが好きじゃないというのもあるが、無理に販売する気はない。『おいしい』と思ってもらえたら、お客様は離れない」


ネットを通じた顧客開拓にはバランス感覚が必要

 生産・加工されたコメなどは、荒川氏の妻、正代さんが得意のパソコンを駆使して販売する。

 そもそも直売を始めるようになったのは90年代初頭までさかのぼる。近隣の生産者が開いていた直売所でのコメの販売が出発点となった。とはいえ、当時は農協出荷が中心で直売は微々たるものだったという。

 ちょうどそのころ、荒川氏は経営委譲を受け、パソコンを導入する。これが直売を拡大させる転機となった。

 その後、正代さんと共に地元の農業改良普及センターでパソコンの講習会に参加する。往時を振り返り、荒川氏は次のように語る。

 「妻が意欲的に取り組んでくれたおかげで2000年ぐらいにホームページを開設することができた。自分はといえば、勉強する気はあったが、一度画面を真っ黒にしてからすっかりやる気をなくした(苦笑)」

 このホームページ開設をきっかけに直売の比率は年々高まっていく。現在では農協出荷がなくなり、直売8に対して契約取引が2という状況になった。ここに至るまでにネット販売の果たした役割は小さくなかったと荒川氏は言う。その一方で、いい教訓となる出来事があった。

 「同一法人から2t、3t、3tと続けざまに注文が入ったことがあったが、支払日になっても入金がない。後日、連絡してみると倒産したと言われた。個人としか取引する気はなかったが、そのときはたまたま在庫があったので出荷したらこういうことに。農家は慣れていないから狙われやすいのかなと思った」

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